非常識?性解放?「全裸で泳ぐ」人たちがいる。

何気ない一日に思えるような日が、世界のどこかでは特別な記念日だったり、大切な一日だったりするものです。

それを知ることが、もしかしたら何かの役に立つかもしれない。何かを始めるきっかけを与えてくれるかもしれない……。

アナタの何気ない今日という一日に、新しい意味や価値を与えてくれる。そんな世界のどこかの「今日」を探訪してみませんか?

INTERNATIONAL SKINNY DIP DAY
(スキニー・ディップ・デー)

毎年、7月の第2土曜日にお祝いされる「Skinny Dip Day」という国際的な記念日があります。

日本はすでに9日となりましたが、世界ではいま、スキニー・ディップを楽しんでいる人たちが多々いるはず、なので今朝はこのお話をさせていただきます。

Skinny Dip(スキニー・ディップ)」とは、言うなれば全裸水泳のこと。男も女も老いも若きも、水着をつけず生まれたての姿(Skin)で海へとダイブ(Dip)することから、Skinny Dipというワードが生まれました。

多くの人が鼻で笑うかもしれません。いわゆるヌーディスト・ビーチに赴くような、ごくわずかな物好きな人たちの集まりと思うかもしれません。それでも、世界中の決して少なくない人たちが、この日、真っ裸になって海へと向かうらしいのです。

スキニー・ディップ──。

どうやらヌーディズム思想を背景に生まれたようですが、古くは“建国の父”と称されるあのベンジャミン・フランクリンや、第6代アメリカ大統領を務めたジョン・クインシー・アダムス、さらには文豪ヘンリー・D・ソローらも、スキニー・ディッピングに興じていたとかいないとか。

永らく「裸で泳ぐなんて恥ずべきこと」といった風潮から、ごく限られたシーンでのみ行われる密事のような扱いが、1960年代に入ると、性に関する社会通念や性的行動が解放され、カウンターカルチャーとしてのゲイ・ムーブメントなどと連動するように、スキニー・ディップは徐々に市民権を得るようになっていったそうです。

セクシャリティ、さらには対人関係への行動規範に挑戦するアクションとして、西洋文化圏において拡がりをみせ、90年代後半、いよいよ社会はボディ・ポジティブを受け入れると、“非常識”は次第に“個性”として受け入れられるようになっていったようなのです。

とはいえ、「スキニー・ディップ・デー」が単なるヌーディストたちのオルタナディブなパフォーマンスで終わってしまえば、それこそキワモノなだけ。

そこで、この記念日を制定した「American Association for Nude Recreation」は2018年より活動や啓蒙に加えて、全裸で海に飛び込むこととチャリティを掛け合わせることを思いつきました。

2018年のアイルランドでは、がん患者やがんから生還した女性たちのべ2505人が海水浴場に大集結。全裸で海へと飛び込みました。参加者のなかには乳がんで乳房を切除した女性たちもいましたが、彼らの行動は同じ悩みを抱える多くの女性たちにエールを送ることとなったようです。

イベントとしてスキニー・ディップを運営することで、参加費や収益金を小児がんの慈善団体へと寄付するなど、ただ脱いでお祭り騒ぎをするのではなく、全裸に意味をもたせる結果に。

そんなわけで、今年も各地でボディ・ポジティブダイバーシティを謳い文句に、全裸水泳大会が予定されています。

なかなか日本では受け入れ難いカルチャーではありますが、いつか露天風呂のように真っ裸で海へとダイブが、たった1日だけ許される日が来るかもしれませんね。

Top image: © Volodymyr TVERDOKHLIB/Shutterstock.com
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