自分だけの贅沢時間をアレンジ。 いま、「スロートラベル」が熱い!
「旅」といえば、定番観光スポットを巡ったり、インスタ映えする写真を撮ったり……そんなイメージを持つ人も多いだろう。でも、ちょっと待って。最近は、もっと自由で、もっと深く旅を楽しむ「スロートラベル」が、新たな旅のスタイルとして注目を集めている。
観光地を駆け足で巡るのではなく、その土地の文化や自然、人々との触れ合いを大切に、時間をかけてじっくりと旅をする。それがスロートラベル。
忙しい日常から離れ、自分と向き合いながら、特別な体験をしたいと願うZ世代の心を掴んで離さない、新しい旅の形だと言える。
なぜ今、「スロートラベル」なのか?
その背景にある時代の変化
スロートラベルが生まれた背景には、現代社会の様々な変化がある。大量生産・大量消費の時代を経て、人々の価値観は大きく変化した。「モノ」よりも「コト」を重視し、心の豊かさや本物の体験を求める傾向が強まっていることも理由だろう。
また、環境問題への関心の高まりも、スロートラベル人気を後押ししている。環境負荷の少ない交通手段を選び、地域経済に貢献できるエコツーリズムに参加するなど、サステナビリティを意識した旅への需要は、年々増加している。
オンライン旅行会社「Booking.com(ブッキングドットコム)」が、2021年に30ヵ国29,000人を対象に調査した「Sustainable Travel Report 2021」によると、「パンデミックの影響で今よりサステナブルに旅行したいと思うようになった」と回答した世界の旅行者は、じつに61%という数字に。持続可能な観光への高まりを示すひとつのデータとして興味深い。
そして、情報過多な現代社会において、デジタルデトックスを求める声も高まっている。スマートフォンから離れ、自然の中で心身を休ませるスロートラベルは、そんな現代人のニーズにも合致していると言えるだろう。
Z世代を虜にする「スロートラベル」最新事情
日本国内で体験できるコト
次に具体的なスロートラベルの例を見ていこう。
日本では、近年、宿泊施設の多様化が進んでいる。従来型のホテルに加え、農家民宿やゲストハウスなど、より地域に密着した宿泊施設が人気。また、アグリツーリズムやグリーンツーリズムなど農業体験や、地元食材を使った料理を通して、その土地の文化や生活を肌で感じることができる観光形態に注目が集まっている。
たとえば、JAグループの旅行会社「Nツアー株式会社農協観光」では、同グループの特性を活かし地域の個性と魅力を体感する自然・農体験ツアーを充実させている。また、近年では、環境保護や地域貢献に繋がるエコツアーも人気だ。たとえば、沖縄県石垣島では、サンゴ礁の保全活動に参加できるツアーが開催。旅行を通して社会貢献できる点は、社会問題に関心の高いZ世代にとって大きな魅力だろう。
グローバルな視点で旅をアップデート
海外のスロートラベル事情
海外では、さらにユニークなスロートラベルのスタイルが生まれている。たとえば、近年注目を集めているのが「トランスフォーマティブ・トラベル」。これは、旅行を通して自己変革や成長を促すことを目的とした旅のスタイルを指す。ヨガや瞑想のリトリート、ボランティア活動への参加などを通して、内面的な成長を促す旅が人気を集めている。大切なのは、旅行を通して何を「変容」させたいのか。それは、仕事で疲弊した心身をリフレッシュすることかもしれないし、人間関係に悩む中で、自分自身を見つめ直すことかもしれない。
また、デジタルデトックスを目的とした旅行も人気だ。デジタル機器から離れ、自然の中で過ごすことで、心身をリフレッシュできる「デジタルデトックス・リトリート」を提供する宿泊施設も増えている。
このように、スロートラベルは、単なる旅行スタイルの枠を超え、自己成長や社会貢献、そしてウェルビーイングといった、より深い価値観と結びつきながら進化を続けている。
これからのスロートラベル
可能性と課題を見つめて
スロートラベルは、今後ますます多様化し、私たちの旅のスタイルを大きく変えていくだろう。テクノロジーの進化によって、よりパーソナルな旅行体験が可能になるいっぽう、地域との共存や環境保護といった課題にも向き合っていく必要がある。
スロートラベルは、私たちに「旅とは何か」「本当に大切なものとは何か」を改めて問いかける、新しい旅の潮流と言えるだろう。