「映画史最大の大波」が過ぎ去る

9月14日、映画史上最大の大波「ヌーベルバーグ(=新しい波)」を先導した、フランスの映画監督ジャン・リュック・ゴダールが死去した。

体の自由を損ねる複数の病を患っており、スイスにて自殺幇助による安楽死を選んだそう。スイスでは、法律によって(状況次第で)自殺幇助が正当化されている。

ゴダール監督は、かつて映画史上最大の“新しさ”を生み出した巨匠。

59年の『勝手にしやがれ(À bout de souffle)』をはじめ、革新的かつ大胆な作品群でフランスの映画界に衝撃を与え、米アカデミー賞からは「情熱と挑戦的な姿勢で新たな映画ジャンルを確立した」として名誉賞を受けたほど。

数々の名作は後の映画界に大きな影響を与えたとされ、スコセッシやタランティーノといった著名な監督たちがゴダールからの影響を公言している。

© Emmanuel Macron/Twitter

これは、訃報を受けてフランスのマクロン大統領が投稿したツイート。

「最も現代的かつ自由な芸術で、映画の既成概念を破壊したフランス映画界のマスター。私たちは、国の宝たる天才を失ってしまった」

フランス、ないしは映画界にとっての大きな損失を嘆いている。

2018年の『イメージの本』が最後の作品。被写体からアングル、カット割り、音響に至るまで独創性に溢れていたゴダール作品は、没した今なお「最も新しい」と言えるだろう。

これが本当の『ゴダールの決別』。映画が芸術となり得た偉大な功労者の死をもって、ひとつの時代が終わったのではないだろうか。

最近はなかなか“芸術的な”映画も流行らないし、(芸術としての)映画も一緒に死んだ、ということなのかもしれない。

Top image: © PL Gould/IMAGES/Getty Images
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