素材はあの「猛毒魚」!イタリアより、毒魚スニーカーが登場
スニーカーフリークの人々は、常に斬新なアイデアに飢えていることだろう。
そり出たソール、ド派手なカラーリング、グラフィティデザインetc……。色々あるけれど、ここでひとつ、「素材に個性を見出す」というのはいかがだろうか。
今回は、単にサステイナブルな素材を用いているのとは一味違う、超珍しい新素材を使ったスニーカーをご紹介。
白地にアクセントカラーが映えるキャンバススニーカー。ヒール部分の素材に使われているのは、「ミノカサゴ」だ。
フィッシュレザーが注目されつつあるとはいえ、いったいなぜ、わざわざ派手で使いにくそうなミノカサゴが選ばれたのか。
背景にあるのは、ミノカサゴが外来種として問題視されているという事実。
温暖化によって本来の生息域ではないサンゴ礁に紛れ込み、在来種を食べて生態系を乱してしまっているのだそう。特に稚魚にとっては致命的で、5週間で生息域の79%が食べ尽くされてしまうという。
そこで、ただ駆除するのではなく、素材として利用する案が出たわけだ。
フロリダ州のダイバーが立ち上げたスタートアップ「Inversa」と、イタリアのスニーカーブランド「P448」のコラボによって誕生したのが、この「ミノカサゴ・スニーカー」。
P448は、イタリアでも有名なスニーカーブランドのひとつ。グローバルな人気を誇る同ブランドが新素材を採用することは、新たな選択肢を提案する上で大きな意義があるはず。
1足の生産につき1匹分のミノカサゴ駆除に貢献でき、これが7万もの在来種保護に繋がるそう。また、Inversaによると、今後は財布をはじめとする他のレザー製品にも応用する計画もあるらしい。
スニーカーは今年6月より、パリの百貨店「ボン・マルシェ」内の店舗限定で販売されている。
主流になってきた「動物由来素材を使わない」とは別のアプローチで「生態系保護」を目指す、新しいサステイナブル・ファッションの選択肢と言える。
ただし、温暖化に歯止めをかけない限り根源は解決されないし、このスニーカーだけが生産され続ければ、今度は逆にミノカサゴが絶滅の危機に瀕してしまう懸念もあるだろう。
「外来種が紛れ込む状況は人間の責任。人々は、その解決に向けて動き出す義務がある」と、Iversaの広報は語る。
スニーカーをきっかけに、人々が環境問題へ関心を持つことを期待したい。