あなたは、この「101の高級ガラクタ」使いこなせるか
毎回、斬新で鮮やかな色づかいなどが評判を得ている「The Elder Statesman」のコレクションだが、先月発表された23年春プレタポルテは段違いに“ぶっ飛んでいる”。
日本からインスパイアされ、レトロブームでも流行っている昭和風ビジュアルを全面に打ち出した本コレクションは、一見するとシュールの一言に尽きる。
写真には一つずつ「超覚醒眼鏡」「電話代は削減」「麺類クーラー」といったユーモラスな日本語の見出しがあてられ、昭和の雑誌風のビジュアルが完成。
モデルはすべて(非常に個性的な)日本人で、アイテムも傘付きのパンプスや昼寝用装備などシュールなものばかりだ。
さて、これらのインスピレーション源となっているのは、1995年に珍道具発明家の川上賢司が上梓した『101 Unuseless Japanese Inventions: The Art of Chindōgu』という本。
「消費社会への反抗心」をルーツに、実用的なようで使い道の無い珍道具たちを服へと昇華したのだという。
「どんなに馬鹿げたものでも、自由に目的を与えて作ることができる。コンセプトはそんなイメージだよ」クリエイティブディレクター、ベイリー・ハンターは語る。
実際、コレクションは実用性のないものばかりではなく、アナーキーさや遊び心が加えられたファッションとして成立している。
また、「長持ちする」「車を時代遅れにしよう!」など、いくつかのアイテムからは、反実用主義とは別に(ユーモラスすぎて分かりづらいが)サステナビリティへの意識も感じられる。
Elder Statesmanは、最高級のカシミアを使った超ラグジュアリーニットウェアで知られるブランド。
「ラグジュアリー」という概念、そして最高級の素材すら消費される社会に、“使いどころに困る服”で抗おうということか。
ちなみに、他にも日本人にインスピレーションを得た海外デザイナーのコレクションはあるが、それらも変わった要素を含むものが多い気がする(CASABLANCAの「Masao San」、サンローランのメンズ秋2017などなど)。
西洋美学への憧れに端を発し、消費社会のために更新されてきた昭和的な「日本っぽさ」は、当の西洋人からはこれくらいシュールに見えているのだろうか。
これらを身に着ければ、新たな「日本」が見えるかも……?