「完璧すぎて気持ち悪い」ロエベの新作が話題に

アートやデザインの文脈において、人の手を感じさせない「完全な計算」というのは、基本的に違和感を覚え、気持ち悪くなるもの。

花道に精通する知り合いに聞いた話によると、花道の一派に「すべてを計算して制作する」流派があるそうだが、その作品を見ると、あまりの整い方に違和感を覚え、CGに思えてきてしまうのだという。

JWアンダーソン率いる「ロエベ」の2023年ウィメンズ春夏コレクションは、そんな「計算のされ過ぎによる違和感」を抱く斬新なコレクションだ。

© loewe/Instagram

本シーズンのテーマとなったのは、質感や造形が精巧すぎて造花のように見えるという「アンスリウム」という観葉植物の花。

アンスリウムからインスパイアを受け、ディティールやシルエットを完全に計算し尽くし、アートやファッションの文脈を超えた「デザイン」のみが主張するようなルックを製作。

© loewe/Instagram

ディティールは計算し尽くされ、1ミリのズレも許さないほどの厳密さが迫ってくる。

ドレープのワンピースやドレスの広がりも、完全な計算によって導き出され、モデルが歩いても一切ずれないという脅威的な安定感を実現。

アウターとインナーのサイズ比が反転したようなスタイリングや、原型を止めないほど歪んだルックも多い。

極端に切り詰められたジャケットに下着が見えるほど短いワンピース、さらにはパッドに覆われたTシャツなど、「アイテムとしての美しさ」と「ファッションとしての違和感」が絶妙なバランスに調和した斬新なコレクションになっている。

©Thierry Chesnot/Getty Images

なかでも特に注目を集めたのが、荒めのピクセル模様になったこちらのスウェットのセットアップ。

あまりの精巧さは合成写真かと疑ってしまうほどで、よく見ても実在するように感じさせない、「完全からくる違和感」を完成させている。

「ピクセルを(フィジカルの)ファッション化」という点では、メタバースに代表される「ファッションのデジタル化」を逆にした発想とも言えるかもしれない。

また、ステージには巨大なアンスリウムの造花(と思われる)オブジェが設置されているほか、ショートドレスの胸にアンスリウムの咲いたルックなども登場。

コンセプトにとどまらず、造花なのか本物なのか分からない花自体の特徴もよく生かされている。

“違和感マックス”なはずの本コレクションだが、鬼才JWアンダーソンが手がけているだけに、モードとして成立しているのが尚更怖いところ。

こういったアップデートはバッグやシューズ等の定番アイテムにも施されているし、来年の春には街中で“違和感を身に纏う”人々を見かける、カオスなシーズンがやってくるかもしれない。

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Top image: © Thierry Chesnot/Getty Images
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