人間らしく生きる。「深夜ラジオ」を聴く。
もっとも聞き慣れた声__。
自分が深夜ラジオを聴き始めたのは中学生のときだった。
バナナマン、オードリー、アルコ&ピースのラジオから始まり、徐々に彼らが出演するテレビ番組を見たりと、私のエンタメ鑑賞を支配していった。
なぜ深夜ラジオを聴くのかという理由ほど、言語化して野暮なこともないような気もするが、私を惹きつけて離さない何かがある。
瞬間的におもしろいのはもちろん、聴き続けることで醸成されていくおもしろさである。
その番組で長い年月をかけてつくりあげてきた空気に馴染んでいく過程の中で、毎回毎回のおもしろさは増していくのだ。
パーソナリティーのフリートークでは、その週彼らに起きたことが余計なほど詳細に語られる。
とんでもないハプニングがあることもあれば、絞り出したエピソードであることもある。
それはまるで、家族からその日の出来事を聴いているような感覚。
自分が経験していないあたりまえを目の当たりにしてきた人間の他愛もない話を聴く機会は、そう多くはない。
知らない街のバーテンダー、タクシーの運転手といった普段関わらないものの、急に他愛もない話をするシチュエーションが私は好きである。
深夜ラジオにはそれに近しい感覚を覚える。
私のボヤキだが、現代社会において人間の活動は常に短期的な成果を求めすぎている。
そうでもしないとこの社会を生き抜く術がないため、文句ばかり言ってられるわけではないが、常に目的を意識し、課題解決をするためのプロセスを設計し、成果を出すことに揉まれすぎると苦しくなるというのが本音だ。
そういった意味で私にとっての深夜ラジオはより人間らしく生きるための“養分”だと思う。
深夜ラジオを聴くことですぐに何かに活きるというわけでもなく、徐々に自分の血となり肉となっていくことで期待していたわけでもない何かしらの影響を受けていく。
長く続く利害のない人間関係のような、人間らしい試みが広く開かれたメディアとして存在することに幸せを感じている。
深夜ラジオを聴き始めて10年。
10年間継続できたことなど人間数えるほどしかないであろうが、なぜか努力なしに習慣となった。
これからも私の中でのあたりまえとしてあり続けるだろう。
「おやつなトピック」って?
Z世代のインターンから、この道うん十年のベテラン編集者まで、TABI LABO“ナカの人”がリレー形式で担当するコラムです。