水中の騒音により意思疎通ができず、悲鳴をあげるイルカたち。

交通量の多い場所や工事現場付近では、話している相手の声がまったく聞き取れない、という経験は、誰にとってもあるだろう。

じつは、イルカも同じように、人間の出す「騒音」によってコミュニケーションが困難となってしまっていることがあるようだ。

学術誌『Current Biology』にて発表された研究によれば、イルカたちのコミュニケーションにおいて、人間による騒音が存在すると、イルカが自身の声を調節したとしても、騒音の影響を避けることができないらしい。

イルカは普段、エコーロケーション(反響定位)やカチカチ音、ホイッスルなど、さまざまなを使うことで他のイルカとコミュニケーションをとっている。

今回の実験は、イルカたちのそうした音によるコミュニケーションが、人為的な騒音によって阻害されうるのかを調査したものだ。

実験では、トレーニングされたバンドウイルカ2頭に吸盤のついたタグを装着し、騒音下で2頭が協力して行うタスクの成功率を検証した。

そして実際に、軍需産業や石油産業、海運産業によって生じる騒音に似た音を聞かせたところ、2頭はその音に負けないように鳴き声を長くしたり大きくしたりしていたのである。

騒音が大きくなればなるほど、イルカたちはお互いの声が聞こえるように叫び、金切り声を上げたりしたが、もっとも大きな騒音下では、彼らのタスクの成功率は62.5%にまで低下してしまったという。

今回の結果は、野生動物の集団行動に騒音がどのように影響するかを考慮する必要性を明確に示すものとなった。

動物社会ではコミュニケーションをとり、協力しながら生きていくことは必須だ。騒音の影響でうまく協力行動をとれないことで、彼らの生存や健康が脅かされてしまう可能性は十分に考えられる。

騒音公害は、私たち人間だけでなく、普段は見えない水中の哺乳類たちも苦しめる場合があることを、知っておく必要があるかもしれない。

Top image: © iStock.com/:Madelein_Wolf
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