1ヵ月以内にペットを没収!? エジプトで10種類以外の犬が飼育禁止に
エジプトで新しく施行された法律が物議を醸している。
当政府は5月29日「危険動物及び犬の所有の規制法」を導入し、この新法はすでに施行されている。
去る6月26日、エジプトの動物保護団体「Animal Protection Foundation(APF)」の公式Instagramにこんな写真が投稿された。エジプトの議会に集まる人々の様子だ。特定の犬種の飼育を事実上禁止する新法が可決されたことに懸念を表明し、集まっているとみられる。
2023年法律第29号「危険動物および犬の所持に関する規制」と呼ばれるこの法律は、「危険」とみなされ、徹底的な安全検査の対象となる犬種のリストを規定している。
これらの犬種の飼い主は、1ヵ月以内にペットを引き渡さなければ没収される。ピットブル、ロットワイラー、ジャーマン・シェパード、ボクサー、ハスキー、コーカシアン・シェパード、ブル・マスティフなど、リストに載っている犬種の飼育に対して厳しい規制が適用される。
10種類以外の犬種の飼育はだめ。ってなんで?
エジプトで新しく施行された法律は、ほとんどの犬種を禁止し、違反者には重い罰金を課すという内容だが、犬種選択の根拠は説明されていないという。
飼い主が「安全」検査を受けることなく所有できる犬種は、コッカースパニエル、ラブラドール、プードル、マリノア、ポメラニアン、ジャックラッセル、ホワイトシェパード、マルチーズ、サモエドの10犬種のみである。(10番目の犬種は翻訳の問題で特定できなかった)。
この法律が制定された背景には、ある男性がピットブルに襲われて死亡した事件がある。
ピットブル、ジャーマン・シェパードやハスキーなどの禁止犬種は、飼い主がペットを引き渡せるまで1ヵ月の猶予が与えられている。奇妙なことに、なぜジャーマン・シェパードが禁止され、ホワイト・シェパード(白い被毛を持つ遺伝的に繁殖された変種)が許可されているのかについての説明はない。
この法律はまた、飼い主に1頭につき最高5万エジプトポンド(約23万2000円)の登録料の支払いを義務づけている。犬を登録せず、その後に人を襲った場合、最低6ヵ月の禁固刑となり、死に至った場合は最低10年の懲役刑となるようだ。
ペットを手放さなければいけないらしいが……
上述したように、禁止犬種に指定された犬の飼い主たちは、1ヵ月以内に政府に愛犬を引き渡さなければならない。
しかし、没収された犬は政府の安全免許手続きを受けるが、生かされるかどうかは不明。引き渡された後、自分の飼い犬の生死がわからないとなると……飼い主がこの法律に納得できないのは当然のことのように思える。
市民と愛護団体に募る不満
「交通事故があったからといって、車の運転を禁止する法律を可決するようなものです」。
新法について「エジプト動物慈愛協会(ESMA)」のモナ・カリル会長の見解を『FORTUNE』誌が紹介する。
また、飼い主たちも自分たちの飼い犬が人に危害を加えたことはなく、ペットの品行方正としつけを徹底させるための措置を講じてきたと述べ、この法律に対する不満と不信感を表明している。
禁止する代わりに
同法律をめぐる論争や反対運動を受けて、飼い主や動物愛護団体が提起した懸念に対処する改正案や代替案を求める声が上がっている。
提示されている改正案を以下に簡潔にまとめた。
- 犬種特定法(BSL)の再評価: 特定の犬種に焦点を当てるのではなく、責任ある飼い方と犬のしつけを重視し、犬が品行方正で脅威を与えないようにする。
- 行動評価: 犬の行動、社会化スキル、刺激に対する反応を評価するためのアセスメントを実施する。評価に合格した犬は、適切な訓練とケアを受ければ、犬種制限を免除される可能性がある。
- 教育と啓発プログラム: 責任ある犬の飼い方、犬の行動、犬の攻撃性の根本的な原因に対処するためのしつけ方などに関する一般向けの教育・啓発キャンペーンに投資する。
- 動物福祉法の強化: すべての動物を虐待、ネグレクト、残虐行為から守り、飼い主に責任を負わせるための包括的な動物福祉法を導入する。
- 動物市場の規制強化: 危険な動物やエキゾチックアニマルを販売する市場に対し、より厳しい規制と監視を実施し、その入手を防ぎ、公共の安全を確保する。
- 専門家や団体との協力: 動物行動学者、獣医師、動物愛護団体と協力し、彼らの専門知識に基づいた効果的な規制や政策を策定し、人間と動物双方の福祉を確保する。
APFの公式Instagramの投稿によると、「会期は7月29日に延期に」なったと報告されており、当団体は引き続き反対する人の協力を募っている。