コスメ × 旅=最強の体験! Glossierの「パスポート戦略」
コスメブランド「Glossier(グロッシアー)」が仕掛ける、ちょっと変わったロイヤリティプログラム。それが「Glossier Passport Book」だ。
従来のポイント制とは一線を画し、実店舗への来店を「旅」に見立てた体験型施策。熱狂的なファンを生み出す背景には、顧客とのエンゲージメントを深める、巧妙な仕掛けが隠されているようだ。
なぜ、いま「パスポート」なのか
Z世代の心を掴む逆転の発想
スマホひとつで情報が手に入る時代。あえて実店舗に足を運んでもらうためには、なにか特別な“体験”が必要と考えたGlossier。同ブランドのパスポートは、そんな時代へのアンチテーゼとも言えるかもしれない。
アメリカとイギリスにあるGlossierの店舗を巡り、特別なステッカーや記念品を集めたり、パスポートにポラロイド写真を貼ってカスタマイズしたり……。まるで旅の思い出を記録するように、ブランドとの絆を深めることができるという仕掛けだ。
キーワードは「所有欲」と「SNS映え」
このパスポート戦略の裏には、デジタルネイティブ世代の「所有欲」と「SNS映え」という2つのキーワードが見え隠れする。
希少なアイテムを集めたい。自分だけのオリジナルをSNSで共有したい。そんな心理をくすぐることで、顧客は自らブランドのファンとなり、情報を拡散するインフルエンサーとなる。ブランドコンサルタント会社「The Red Tree」のFiona Glen氏は、「Cosmetic Business」の取材に対し、Glossierパスポートのトレンドを以下のように表現し、消費者の心をつかむ戦略の有効性を示唆した。
「いわば、コーヒーショップのスタンプカードの美容業界版といったところかもしれません。消費者に店舗を訪れさせ、SNSに投稿することを奨励する賢い方法だと言えます」。
口コミこそ最強のオウンドメディア
ロイヤリティは「所有感」で育む
Glossierは、顧客の口コミを「オウンドメディア」として重視。従来の広告に頼らず、顧客自身がブランドの魅力を発信する仕組みを構築している。
「消費者がSNSで活動的であることをよく理解しています」とGlen氏が言うように、SNSでの発信に積極的なGlossierの顧客層。企業が発信する情報よりも、顧客のリアルな声が共感を呼び、また新たな顧客を呼び込むトリガーとなっているようだ。
従来のポイント制ロイヤリティプログラムは、もはや時代遅れなのかもしれない。2024年に発表された、このGlossierのパスポート戦略は、顧客に特別な体験を提供し、ブランドへの愛着を育むことが重要だと教えてくれる。
物理的なパスポート、店舗での体験、SNSでの共有……。これらすべてが組み合わさることで、顧客はブランドとの特別な関係性を築き、熱狂的なファンとなるのだろう。