受刑者たち、猛暑の生き抜き方。エアコンがない刑務所の実態

この夏、記録的猛暑がアメリカを襲っている。

最高気温が43.3度を超える地域が27日間連続で発生するなど、観測史上最長記録を更新。煮えたぎるような暑さは、それこそ不要不急な外出を避けたくなるはずだが……なかには自由に外出できない人々もいる。

そう、受刑者たち。

『The Texas Tribune』が伝えたところによると、今年6月以降に少なくとも9人の受刑者が心臓発作や心疾患で死亡したそうだ。その原因と考えられているのが猛暑。というのも、アメリカでもっとも暑い地域とされる南部テキサス州やアリゾナ州をはじめ13の州立刑務所にはエアコンが設置されていないらしい。

じつはこの問題、科学誌『PLOS ONE』に掲載された研究においても、刑に服する彼らの悲惨な現状を裏付けている。いわく、アメリカの刑務所における死亡率は、気温が平均気温より5度上昇するごとに5.2%増加するという結果に。

「元受刑者による暴露」
真夏の米刑務所、驚きの実態

2022年に出所するまで37年間、刑務所で過ごしたCalvin Johnson氏が『BBC』の取材に語っている。彼もエアコンのない監房で37回の夏を経験した一人だ。

「時にはトイレを詰まらせてから水を流すんだ。そこにパンツとシャツを入れて、少しばかり水につけておいたりね」

焼けつくような日々を耐え忍ぶには、“創造力”となにより「生き抜く」という“必死さ”が求められる。Johnson氏のコメントからそんな状況が伝わってくる。

受刑者のなかには監房の洗面台の水よりも数度ほど冷たいという理由で、トイレの水を飲む人もいたという。

テキサス州刑事司法局は
“真逆の意見”

だが、行政機関の見解は真逆のようだ。

「テキサス州刑事司法局」Amanda Hernandez報道官は「2012年以降、暑さが原因による受刑者の死亡者は出ていない」と、死亡事案を刑務所内の暑さが原因とする意見を不正確だと一蹴。

「施設内には空気を循環させる扇風機が適宜配備されており、もちろん受刑者はそれらを利用することができるし、必要に応じて冷房の効いた休憩所も利用可能です。それだけでなく受刑者は誰でも氷と水を利用できます」。

これに対し、Johnson氏は反論する。

たしかに刑務所内で涼む方法はいくつかあったが、決してアクセスは簡単とはいえない。扇風機だって数が足りてるとは言えないし、氷なんてめったに手に入らなかったよ

人生の四半世紀以上を塀の中で過ごした人物の経験談とは、かなり食い違う点が存在する。

過酷な環境で働く
刑務所職員にも影響

暑さの影響を受けているのは、どうやら受刑者だけではないようだ。元刑務所職員のClifton Buchanan氏のコメントを紹介したい。

まさに地獄で働いているようだった。政治家たちが空調システムを導入するため、職員から犠牲を出さなくちゃならないのかい?

「刑をまっとうし犯罪者を更生させる」「秩序を保つため社会の危険人物を隔離する」といった、刑務所本来の役割をこのような状況下ではたして本当に果たすことができるのか。疑念がのこる。

Top image: © iStock.com/LightField Studios
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