そろそろ、この「熱波」に名前を付けてあげよう

なんとかして、この熱波に名前をつけたい──。

世界中の人々の想いがついに一致した願望。地球温暖化によるさまざまな影響があるなか、私たちが今もっとも身近に感じるのは、この「熱波」ではないだろうか。

たとえば、時速39マイルを超えた嵐は、日本を含む北大西洋では「台風」と呼ばれる。他の地域では「サイクロン」、「ハリケーン」として呼ばれているが、おそらくどのワードを聞いても、みな同じイメージが頭に浮かぶだろう。

そこで「熱波もネーミングしよう!」という議論が、いま、気候専門家の間で真剣に行われているらしい

議論は今年7月にヨーロッパで表面化され、まずイタリアの民間気象局が非公式に付けた「ケルベロス」という名前は、そのキャッチーさとインパクトにより急速に浸透。ヨーロッパ内でこの名前が定着しつつあるなか、次いでスペインの都市計画グループは「クセニア・セビリア」と命名。他にもギリシャでは「クレオン」と名付けられるなど、続々と各国でネーミングが発生した。

WMO(世界気象機関)はこの混乱を鎮圧するために「米国発の最近の市民社会の取り組み」について言及し、「性急な名前付けは国民に混乱を引き起こし、公式で確立された警告を妨げる可能性がある」と主張。つまり、このネーミング議論を国際的に調整する必要がある、とのこと。

 

こうして一旦収まったネーミング議論だったが、再び口火を切ったのは「インド人間居住研究所」の上級研究員であるチャンドニー・シン博士。

彼は「物事にネーミングすることは国民の意識向上に役立つが、極端な出来事にネーミングすることがどのくらい国民の備えに役立ったかをあらわす証拠は見たことがない」と、ネーミング行為自体に真っ向から反対した。

それに次ぐように「NOA(アテネ国立天文台)」の研究責任者ヴァシリキ・コトロニ博士は、嵐のネーミングが実際に認知度の向上に繋がっていると科学的に証明し、再反論を唱えた。

では、なぜ単なるネーミングがここまで慎重に、国際的に行われるのか?

それは、私たちの脳が社会的に影響しあっているから。ロンドンの気候変動対策ユニットの責任者である神経科学者のクリス・デ・マイヤー博士は、「人間の脳は自分だけでなく他人の精神状態について考えるのにも適している」と説明しており、これは「メンタライジング」と呼ばれるプロセスなのだそう。

人間に備わっている、名前などの社会情報に合わせて調整されたこの強力な記憶システムを用いれば、異常気象に対するネーミングを行うことでメンタライズネットワークを活性化し、社会的エンコーディングを引き起こす第一歩になる、とのこと。

熱波に対する統一定義が存在していない現時点では、すぐに熱波の分類や命名に関する国際的合意を行うのは難しいと考えられているが、熱波にしろ異常気象の名前付けが異様に盛り上がっている光景は、本当の問題や根本的解決策から目を逸らしているような気もする……。

クールなネーミングセンスをお持ちの方、ぜひ挙手を!

世界中の人々があなたのネーミングをお待ちしています。

 

Top image: © iStock.com/Imgorthand
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。