【最先端】ドイツのスーパーが食品を「真のコスト」価格で販売
生産から消費までに排出される温室効果ガスの総量を示す、いわゆるCO2を見える化する指標である「カーボンフットプリント」は、日本でも試験的に導入している企業がある。
しかし、今回はあるスーパーが試験的に実施した価格政策が、一歩先をいっているので紹介したい。
ドイツのディスカウント・スーパーマーケット・チェーン「Penny」が、8月初めから1週間、食品の気候への影響や健康コストに基づいた新しい価格体系を導入した。
はドイツ国内に2150店舗を展開する「Penny」。今回の新価格導入は、全店舗で試験的に9品目で実施されたようだが、これらの価格は肉や乳製品などの製品が「真のコスト」を反映したものだったという。
True Costの詳細とは?
いわゆるこの「トゥルーコスト」は、ニュルンベルク工科大学とグライフスヴァルト大学の専門家によって計算され、製品が気候、土壌、水使用、健康に与える影響を考慮に入れている。
例えば、ヴァイナーソーセージの価格は3.19ユーロ(約504円)から6.01ユーロ(約950円)に上昇し、特筆すべきはマースダム・チーズで、価格は94%も上昇したらしい。
肉やチーズの生産が環境に及ぼす影響は非常に大きいとされ、世界の温室効果ガス排出量の14.5%を占めるだけでなく、森林破壊、生物多様性の損失、水質汚染などを引き起こしている。
2つの大学の専門家は、マースダマー・チーズが排出する二酸化炭素(CO2)とメタンガスに85セントの「隠れたコスト」がかかると判断。さらに、土壌汚染に76セント、農薬に63セントが加算された。
それだけではなく、肥料使用による地下水汚染を考慮して10セントが加算された。よって計2.34ユーロ(約370円)が元値に付け加えられることに。
スーパーが責任を果たすべきか?
Pennyの最高執行責任者であるStefan Görges氏は、この取り組みについて『Reuters』にこう語っている。
「私たちは、サプライチェーンを通じて発生する食料品の価格が、環境コストをまったく反映していないという“バツが悪いメッセージ”を発信する必要があります」
食品にかかる気候変動コストを認識し、計算することは、スーパーマーケットとしては異例のことである。しかし、ドイツではその傾向が強まっているようだ。
買い物客の反応
気候変動コストと元値の両方を表記して販売するという。
実際のところ、消費者の意識については不明点が多く、コストの計算に携わった大学教授らが今後の研究で分析、解明していくらしい。
ペニーのキャンペーンについて、買い物客のホルガー・メッケルはフランクフルトの店舗で、『Reuters』のインタビューに対しこう答えている。
「個々の商品がどれだけ高価になったかは見てみないとわからない。買うかどうかはわからない。場合による」
カーボンフットプリントの記載よりも一歩進んでいるPennyの試み。今回の試験的な実施を経て、今後どのような環境へ配慮した取り組みが促進されていくのか、注目していきたい。