米国で2番目に多い死因は「自殺」。深刻な社会問題に取り組むためハーバード大学心理学部が「自殺研究センター」を設立
米ハーバード大学は今年、マサチューセッツ総合病院との提携で、「自殺予防と研究のためのセンター」を設立した。
ハーバード大学心理学部のMatthew K. Nock氏とマサチューセッツ総合病院精神科のJordan W. Smoller氏が共同で率いるこのセンターは、アメリカ国立精神衛生研究所から多額の助成金を得ただけあって期待値も高い。
それもそのはず。同センターは、米国で増大するメンタルヘルスの深刻な問題を改善することを目指している。
同国において、15歳から34歳の死因の第2位は「自殺」であり、その自殺率は100年前と変わらず高いままなのだそう。そのため彼らハーバード大学とマサチューセッツ総合病院が協力し、自殺予防のため世の中の状況を変えることを目指すという。
まず彼らは、自殺をより“理解”することに取り組むようだ。
具体的には、コンピュータ科学者や臨床医、疫学者などさまざまなバックグラウンドを持つ人々の視点と経験を集結させ、現実世界での問題と理想の解決策を結ぶ方法を模索しているとのこと。
さらに現実的な課題として挙げられるのは、自殺を未然に防ぐことの難しさ。
意外にも思えるが、自殺する人の約半数は自ら命を絶つ1ヵ月ほど前に病院を受診し、助けを求めているという。ところが、ほんとうに自殺してしまう可能性のある患者だけを特定するのは難しく、医師たちも苦労しているのだそう。
こうした状況を受け、同センターでは新たな介入戦略となる試験を実施中。人工知能(AI)を活用し、うつ病や双極性障害、物質使用障害(アルコールや薬物依存症)の有無などを電子カルテ情報から分析し、自殺リスクのある患者を特定することを目指している。
今後10年の同センターのビジョンについてハーバード大学のNock氏は、センターが「本来あるべき共同臨床研究」を生み出すことが目標であると述べた。さらに氏は、過去100年間変えられることのなかった米国の深刻な自殺問題を前進させることができるチームの構築を望んでいる、とのこと。
その可能性のはじめの一歩として、今回の共同研究が実現したのだろう。日本におけるメンタルヘルス問題にも新たな可能性がもたらされることを期待するばかりだ──。
ちなみに日本人の15歳から39歳の死因は、第1位が自殺。アメリカより深刻であるどころか、もっと積極的に自殺対策に取り組むべきなのは日本なのかもしれません……。