「夏バテ」は冬のうつ病よりも自殺のリスクが高いらしい

本格的な夏が始まろうとしている。海水浴、プール、BBQなど、この時期ならではのイベントで大盛り上がり。冬の寒い時期から、夏を心待ちにしていた人も多いはず。

しかし、なかには夏の季節性うつ病を抱える人々がいる。

夏の季節性うつ病は、冬の季節性情動障害(SAD)ほど知名度は高くないが、自殺のリスクが高く、気候変動によっても流行する可能性があるんだとか。夏のうつ病の症状は、冬のSADとは異なり、主な特徴は食欲不振不眠症

この記事では、夏の季節性うつ病の原因や症状、そして気候変動がこの状態をどのように影響するか、適切な対処法や治療法について紹介する。

冬と夏のSADの違い

冬のSADに比べ、夏のうつ病は研究や一般的な認識ではそれほど注目されていない。

SADについて初めて科学文献が投稿されたのは1984年のこと。米ジョージタウン大学医学部の精神科医Dr. Norman E. Rosenthalは、自著のなかで「冬だけでなく夏のSADはもっと研究されるべきであり、もっと懸念されるべきである」と述べていることを『The Washington Post』が指摘している。

冬と夏のSADの症状は異なるようだ。どちらも悲しい気分快感の減少が特徴であるが、冬季うつ病患者は過眠、過食、だるさを感じる傾向があるのに対し、夏のうつ病患者は食欲がなく、不眠症なんだそう。

毎年耳にすることば「夏バテ」。夏の暑さにやる気が出ないなんて感じたら、それを「夏バテだ〜」と見過ごさず、体調に違和感を感じたら適切な治療を受けた方がいいかもしれない。

夏季うつ病の自殺リスクは高い

また、夏季うつ病は、冬季うつ病のように無気力になるよりも、より興奮しやすいうつ病であり、患者はより苦痛を感じる傾向があるそうだ。

夏季うつ病患者は自殺の危険性が高い。自殺行動は春の終わりから初夏にかけてピークに達するが、冬には減少する。これは、冬に自殺したいと感じるうつ病患者が、その計画を実行するエネルギーを持っていないからなのかもしれない。

悲しみと興奮の両方がある夏季うつ病の人は、残念ながら、自分自身を傷つけるエネルギーがより強い傾向にあるということか。

気候変動が夏SADを悪化、蔓延させる

温暖化する世界では、夏のSADがより顕著になり、蔓延する可能性があると研究者らは述べている。

暑さと湿気の増加や花粉の飛散量の増加は、この状態を悪化させる要因となると考えられている。さらに、熱波や気温の上昇によって精神衛生が悪化することも報告されている。

夏季うつ病への対処法

夏の季節性うつ病に対処するためには、適切な対策と治療が必要だ。涼しい場所に滞在することや冷房を使用することは、症状の軽減に役立つかもしれないと言われている。

研究者らは、夏季うつ病の患者に冷たいシャワーを浴び、冷房の効いた場所にいることを勧めた。この「冷却療法」は効果が高く、患者の症状を緩和したようだ。

しかし、一旦患者が外の夏の暑さに戻ると、効果は蒸発してしまうそうで、この効果は患者が涼しくしている間だけ持続する一時的な効果だといえる。

さらに、光療法は冬のSADに効果がある一方で、夏の季節性うつ病には効果がないそうだ。

適切な治療法としては、薬物療法や認知行動療法などがあるため、医師の助けを求めることも重要だろう。

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