国王の夏バテを救った「冷やし茶漬け」
暦の上では秋。けれど、いったいこの暑さはいつまで続くのやら。食欲がもっとも落ちる今の時期、サラサラと喉を通る冷やし茶漬けは格好の食事。でも、“冷やし”が一般的になったのって、ごく最近のことなんですよね。
お米を冷たいスープで食べる、この習慣はなにも日本だけの文化ではありません。同じように米が主食のタイにも、冷やし茶漬けと呼びたくなる食べものがあるんですよ。
ジャスミンの花を浮かべた
高貴なお茶漬け
それが「カオチェー」。固めに炊いたごはん(もちろんタイ米)からぬめりをとって、そこに氷とジャスミンウォーターをかけていただくというもの。なんでも、タイで冷たい料理は珍しく、一説にはこのカオチェーだけという話も。
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言ってみれば、サラサラ冷たいジャスミンライス。熱帯の花の芳香が、食べれば不思議と後を引く味わいなんだとか。
つけ合わせには、豚肉や大根を濃いめに煮詰めたものや、ししとうの揚げ物などとともに食べるのが一般的のようです。このとき、脂をお椀に浮かべるのはマナー違反。けっこうウルサイお作法があるみたい。
というのも……このカオチェー、もともとは宮廷料理として提供されていたものなんです。
国王の“夏バテ”を救ったカオチェー
現在でもタイでは一年のうち最も暑い、旧正月(ソンクラーン)の時期に暑気払いとして食べられるそうです。諸説ありますが、19世紀のラーマ5世の時代、暑さで極度の食欲不振におちいった国王のため、喉を通るようにと考案されたのがはじまりだとか。やがて、それは市民へと広まっていきました。
今でもタイ国民から愛されるラーマ5世。暑さのなか国民のために職務をまっとうできたのも「カオチェー」のおかげかもしれませんね。
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