「サウナをもっと日常に近い存在にしたい」元銀行マンのサウナ経営者、中島惇生が考えるサウナの未来

“サウナ全盛”とも言われる昨今。名店ひしめく愛知県名古屋市に2022年12月、新たなサウナが誕生した。「KIWAMI SAUNA」──経営するのはZ世代の中島惇生さん。

国立大学を卒業後メガバンクに就職、順調にキャリアを歩んできた20代は、一念発起し起業という道を選択。彼を突き動かした原動力とはなんだったのか?サウナの未来をどう描いているのか?開業から1年を迎えたいま、インタビューに答える。

中島惇生

1995年鳥取県生まれ。金沢大学を卒業後、三菱UFJ銀行にて3年半勤務。その後、「株式会社REVIVE」を創業しサウナコンサル事業を経て、2022年12月にサウナ施設「KIWAMI SAUNA」を設立。平均週8回、年間400回サウナに入っている。サウナ製作資金調達のため、2022年1月にYouTubeチャンネル令和の虎に出演。条件付きALLを獲得。

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自分がやりたいこと、
良いと思うことを突き通す

 

──どのような幼少期、学生時代を過ごされていましたか?


小学校から中学校まで野球を、高校から大学まではサッカーをしていました。大学時代は部活の朝練、昼に授業、夜はアルバイトという生活スタイルでした。週6で部活があって、夜遅くまでバイトをしていたので旅行などに行く時間がなく、あまり遊んだ記憶がないですね。

高校1年生のとき、サッカー部が県で準優勝するくらいの強豪校で部員も70人くらい。そんななか、自分は素人だったので先輩に「サッカーを舐めるな」と言われたこともありました。ですが、元々野球をやっていたこともあって身体能力には自信があって、問題なく混ざってプレーできました。

当初、目指していたポジションはフォワードだったんです。でも、70人の中で試合に出るために高校ではGKとして出場していました。大学に進んでからは、元々得点を取るストライカーに憧れて高校からサッカーを始めたので、FWに転向しました。やりたいことをやるために。

 

──起業はいつ頃から意識されていたのでしょうか?

 

大学時代にアルバイトしていた頃からです。

当時、時給ではなく完全歩合制で居酒屋のキャッチをしていました。お客さんの会計の15%が給料でしたね。キャッチってチャラいイメージがあるじゃないですか。なので、話を聞いてもらうために逆に真面目な服装や見た目にして、差別化することを意識していました。

あとは、お客さんのニーズを聞いて、自分の契約している店と合わなければ、契約していなくとも心からおすすめできる店を紹介するようにしていました。すると「いい店だったよ」と心から感謝され、次回は自分の契約している店に来てくれたりなど、リピーターも獲得していくことができました。

他のキャッチは短期的な利益を追求する人しかいなかったので、そこも大きな差別化だったと思います。

しばらくして人を集めて組織化しました。お店との交渉や契約、お金のやり取りをすべて巻き取る代わりに、お店から受け取る15%のうち3%を僕がもらい、12%をキャッチの人に返す仕組みです。

この時にスモール起業みたいな経験ができたので、将来は“起業”しようと思ったんです。なので、起業を軸に就活を進めていました。

人生の転換点
サウナとの出会い

 

──大学卒業後はどのような仕事に就かれたのでしょうか?

 

メガバンクに就職し、中小企業の社長の方々を相手に法人営業を行っていました。

 

──サラリーマンになってからサウナを好きになったとお聞きしました。サウナとの出会いについて聞かせてください。

 

仕事で結構忙しい時期の休日にサウナ好きの友人に連れて行ってもらって、初サウナがめちゃくちゃ気持ち良くて(笑)

当時、仕事でタスクに追われている状態だったんです。特に銀行はミスが許されない仕事が多く、何度も何度も確認したりしていると、仕事自体がまったくと言っていいほど進まなくなっていました。

そんなとき、サウナに入ると“デジタルデトックス”もでき、自分を客観的に見ることができてポジティブに考えられるようになるんです。「自分はなぜ今の仕事をしているのか」「起業するために必要なことを学ぶためだよね」「ならばあの業務はこれを目標に頑張ろう」という感じで、本来の目的を再確認することできました。

このように頭のなかの考えが整理されていくと、次第に仕事においても余裕が出てきて、どんどんうまくいくようになりました。

 

──それからサウナで起業されるまで、どのような経緯があったのでしょうか?

 

じつは、サウナで起業するよりも前にCBD事業の会社を立ち上げたんです。日本でも市場が伸びるだろうと考えて、海外から商品を仕入れて販売していました。

ですが、市場自体は伸びる確信もあったし、上手くいく兆しも見えていたのですが、肝心の自分がCBDが“良いもの”という体感があまりなく、途中からこれを全力で売りたいと思わなくなってしまった。そうした経験から、絶対に自分の好きなことで起業した方がいいと思うようになったんです。

一方で、サウナはまったく義務感なく毎日入っていました。その良さを知ってからは連日通うようになって、たまに友人を連れて行ってサウナの楽しみ方を教えたりも。すると、必ずみんなサウナにハマっていって、「サウナめっちゃいいね」と言ってくれて、それが自分にとっては結構楽しくて。

「サウナの良さを広める」だったり「サウナが好きな人を増やす」といったことにつながるようなことなら、本気で取り組めるなと思い、サウナで起業しようと本気で考えるようになりました。最初はサウナコンサルのような仕事から始めたんですけど、「自分が求めるサウナ施設を一から作りたい」と思うようになり、理想の施設づくりにシフトしていきました。

 

──銀行での仕事を辞めて、不安定な起業の道に進むということで相当勇気が必要だったのではないかと思います。

 

退職前に祖父が亡くなったんです。2度起業して会社を興したり、引退後は脳梗塞になって身体の半分が動かなくなっても片手で船を操縦して、漁に連れて行ってくれたり、最期まで人生を生き抜いていてかっこいい人だと思っていました。

お葬式で、喪主の父が祖父のこれまでやってきたことを話してくれて、それを聞いていると、一度きりの人生、好きなことをやらずに死ぬのは嫌だなと思ったんです。そこで、やらないといけないタスクに追われるサラリーマンを辞めて、やりたいことをやろう。と決断することができました。

全国民にとどく
“サウナ社会”の創出へ

 

──現在の日本のサウナ市場に対して、どのような考えを持たれているのかお聞きかせください。

 

「サウナブーム」と言われ、若い人もサウナに入るようになり、サウナ人口が全体的に増えてきたと感じています。中心的な年齢層もかなり若いほうにシフトしましたね。今後は、サウナをもっと日常とする人が増えていくと思います。僕も毎日サウナに行きますし、うちにも2日に一回お越しいただいている常連さんもいます。

サウナ経営者として、習慣的にサウナに入る人をもっと増やすためにいろんなことを仕掛けていきたいですね。サウナがない地域もまだまだあるので、サウナに入る機会をもっと作りたいです。サウナの本場フィンランドでは、ほぼ一家に1台サウナがあるんです。人口が550万人くらいで、サウナの数は330万個。日本も同じくらいの規模にできたら最高だなと思います。

 

──私もサウナが好きなので、家にサウナがあったら毎日幸せだなと思います(笑)

 

ブームと聞いて、サウナに行ってみて気持ちよさを知って、行かなくなったという人は聞いたことがありません。なので、いいサウナが増えていけば、日常的にサウナに行く人も増えていくと思います。

ただ、ブームに乗じてサウナを作って潰れていっているサウナもたくさんあって……。ちゃんといいもの、心地良いサウナを届けるということが大事です。

 

──心地良いサウナとそうでないサウナでは何が違うのでしょうか?

 

心地良いサウナの定義は、じつはフィンランドですでにけっこう明らかになっています。サウナに入ってきた歴史が違うので。たとえば、温度や湿度、サウナ室内の呼吸のしやすさ、心地の良さ、新鮮な空気がサウナ室に入っているか、長くいて身体を芯まで温められるか、サウナ後に団らんできる場所があるかなど。細かいことを言っていけばキリがない。

一方で、そうしたポイントを押さえず、適当に作ったサウナはやっぱり気持ち良くないので長くは続きません。サウナ好きじゃない人が作ったんだろうなっていうのは見たら分かります。もっとこうしたら良いのに、と歯痒い気持ちにもなりますし。相談してもらえれば良かったのにと思うこともあります。

 

──最近は、水着着用とか、家族向けとか、多様なサウナが出てきていますよね。

 

はい、サウナに行く機会が増えるのですごく良い傾向だと思います。サウナって日本だと黙浴が主流ですけど、じつはフィンランドではコミュニケーションの場として機能していて、入ったらまず「どこからきたの?」「ここ座れよ」「ロウリュしてよ」「お前ロウリュ上手いね」といったコミュニケーションがたくさんあります。喋ることを目的に来ている人が多い。だからこそ、“文化”として浸透し、みんなが入るようになっているんだと思います。

静かに入りたい、人と喋りながら入りたいとか、人によって好みの入り方をしていいと思うんです。サウナってもっと自由な場所であるべきなんですよ。僕は最近、誰かと会う時にサウナに行くというような使い方をしています。今までは人と会うときカフェで会うというのが多かったんですが、それをサウナに変えているという感じ。その方が短い時間で深い話ができるので。

みんなサウナに入った方がいいと思うんですよね。どうせお風呂に入るんだから。その時に1セット入ったら、健康的でいられるし、代謝も上がるし、美容に良い、いいことばかりなので、絶対よくない?という感じです(笑)

フィンランドは「幸福度ランキング」世界一。幸福度とサウナ習慣は関連があると思います。騙されたと思って毎日サウナに入ったらみんなハッピーになるんじゃないかな。世界中に毎日シャワーを浴びる時に1セットサウナに入る習慣ができたら、世界の幸福度が上がるんじゃないかなと真剣に思っています。

 

──最後に、今後の目標を聞かせてください。

 

2つあって、まず店舗を増やしていきたいです。「KIWAMI SAUNA」という名前にするか、別の名前にするかはわかりませんが、いろいろな地域にサウナを作っていきたいですね。誰でも入れて、広い水風呂に気持ちよく入れるサウナ施設を街に一店舗という感じで展開していきたいです。

もう1つは、家庭用のサービスです。フィンランドもそうですけど、家にサウナがあるので入りたい時に入れるというのはすごくいいと思う。今は日本に焦点を絞っていますが、将来的には海外にも展開していきたいです。

中島さんの「KIWAMI SAUNA」については以下に詳しく

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これからの世界を創りあげていくであろう

新時代の『イノベーターズの頭の中』を覗いてみよう。

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