なぜ、日本人は「幸せ」を感じにくいのか?

突然ですが質問です。

最近、幸せを感じた瞬間はいつですか?

自分にとっての幸せでまったく問題ありません。ちょっとだけ考えてみてください。あなたが最後に幸せを感じたのはいつでしょう。

感じていないことを否定したいわけではありません。少しでも答えることにつっかえてしまった人にオススメの書籍があるんです。

ダイヤモンド社より2023年10月発売された『超ミニマル・ライフ』です。

なぜって? 具体的にその理由を知っていただけるように、著者の四角大輔さんにお話を聞いてみました。

四角大輔

作家・環境保護アンバサダー/1970年、大阪の外れで生まれ、自然児として育つ。1995年、「ソニーミュージック」に入社した後、「ワーナーミュージック」に転職し、両社で計10回のミリオンヒットを記録。2010年、音楽の仕事を辞し、ニュージーランドの湖畔の森でサステイナブルな自給自足ライフを開始。2021年、第一子誕生を受けて、ミニマルライフをさらに極め、育児のための超時短ワークスタイルを実践。『超ミニマル主義』(ダイヤモンド社)、『自由であり続けるために 20代で捨てるべき50のこと』(サンクチュアリ出版)、『人生やらなくていいリスト』(講談社)、『モバイルボヘミアン』(本田直之氏と共著/ライツ社)など著書多数。

日本人こそ、
ミニマルに生きた方がいい

Photo by Takuya TOMIMATSU

──まず、最初にお聞きしたいのですが、四角さんは「ミニマル・ライフ」をどのように考えていますか?

 

自分の内側から湧き上がってくるポジティブな衝動といった、あなた独自の感覚や感動を大切にする生き方でしょうか。

人って、「タスク、気がかり、不安」といった“不要物=ノイズ”が多いと、そういった内なる衝動を後回しにしてしまいがちです。だから、人生でもっとも大切にすべき内なる衝動に集中すべく、どうでもいい物事を削り落としていくのがミニマル・ライフです。

不要な物や余計なこと、世間体や他人軸を手放して、自分軸を中心にすえてミニマルに生きない限り、人は幸せになれないと断言できます。

 

──今回お話をお伺いするきっかけにもなっている『超ミニマル・ライフ』は、どのような本だと考えていますか?

 

これは2022年9月に出版した『超ミニマル主義』の続編にあたります。『超ミニマル主義』と『超ミニマル・ライフ』の両方を読んで、書いてある内容をすべて実践したら、自分の人生を取り戻せると約束できます。

2冊の内容を合わせて、全部で14ステップ。ここにミニマルに生きて幸せになるためのアクションと理論すべてを詰め込みました。

 

──確かに本を読んでいる時に「こんなことまで紹介するの?」と思うことが何回もありました。

 

よく言われます。構想に10年、執筆に5年かけていますから。

ただもし、すべてが不足していた戦後期の日本や、貧困にあえぐ現代の途上国ではこんな本は不要です。つまり、それだけ今の日本社会は物事が過剰かつ複雑で、ミニマルに生きることが難しいんです。

──なぜそのような状態になってしまったとお考えですか?

 

行き過ぎた資本主義ですね。

資本主義は優れた社会システムで、文明を進化させてきた最強のOSですが、あるタイミングで一線を超え、機能不全を起こしてしまった。無数のバグが発生して末期状態にあるのに見て見みぬふりをして、無理やり延命させている状態です。だから搾取はなくならず格差は広がり、環境破壊も地球温暖化も止まらない。

 

──四角さんは2010年にニュージーランドに移住されてますよね。今お話しされたことは、日本だけではなくニュージーランドでも起きていることなのでしょうか?

 

ある意味ニュージーランドは、日本とは対極の道を歩んできたと言えるでしょう。

福祉と教育が北欧並みに手厚いニュージーランドは、資本主義と社会主義のハイブリッド型で、「経済」と「弱者救済・環境保全」のバランスを取ろうと常に努力している。「足るを知る」を体現している小国で、多くの市民が、苦しいだけの無益な成長を望みません。

 

──なるほど。

 

世界で移動生活をおくりながら65ヵ国を視察し、ニュージーランドで15年近く森の生活を営んできた経験から大量生産・大量消費で無理な拡大成長を目指す「マキシマルな社会」で、本当の幸せを手にするのは非常に困難だと確信しました。

そして、ミニマル・ライフそのものが、まわりまわって社会活動につながることも知っておいてほしいのです。ミニマルな生き方がマジョリティになれば、今のような過剰なサービスは不要となり、環境負荷が大きく搾取が横行する大量生産への企業意識も変わり、過重労働が減るでしょう。

すでに多くの人がミニマル・ライフへシフトしていますが、数年後にはより多くの人がシフトしていくでしょう。

ミニマルに生きれば、
幸せを感じやすくなる

究極のミニマルライフは、バックパック1つで何日も山を歩き続ける登山だと、四角さんは語る。写真は2週間かけて北アルプスを完全縦断した時のもの。

──ミニマルな生き方を実践できれば、幸せになれるのでしょうか?

 

戦略的にその生き方を実践できれば、確実に幸せになれます。でも、その前に知っておいてほしいのは、幸せとは「線」ではなく「点」にあるということです。

 

──というと?

 

学校嫌いだった僕は小学生の時に生きづらさを感じていました。最初は、楽しい時間をできる限り長く持とうと試みましたが、学校で過ごす時間が大半を占める生活では、どうがんばっても「長さ=線」ではかなわない。

ない知恵を絞って出した解決策が、「生きていてもっとも感動する瞬間=点」をなるべく多くつくること。「感動の瞬間」は持続します。思い出すたび、時間の概念を超えて感動にひたれますから。

例えば、僕がレコード会社時代にビッグヒットを出した年は、多くのボーナスをもらえました。その瞬間やランキングで1位となった瞬間も嬉しいですが、後で思い出しても感動にはひたれない。でも、超満員のライヴ会場で、そのヒットソングをお客さん全員が合唱しているシーンは、思い出すたび鳥肌が立ちます。

 

──言われてみれば、確かにそうですね。

 

そして、この「後で感動にひたれる瞬間」を“人生で何回持てるか”が人生の幸福度を決めるのです。だからその瞬間の「感動度合い」を最大化させて、その「回数」を最大化するにはどうすればいいかと考え抜くことが大切であり、そのための人生戦略がミニマル・ライフなのです。

でも、今の日本では、ほとんどの人が「人生でもっとも感動する瞬間」を把握しないまま生きてしまっています。それは“不要物=ノイズ”が多すぎて、まともに「内なるポジティブな衝動」、つまり自分自身に向き合えていないからだと思います。

ノイズを削ぎ落として、ミニマルな生き方を実践していくうちに、自分にとって「本当に大切なこと」に気づけるようになる。それを知らずに生きていると、物欲や競走欲を満たすことが幸せだと勘違いして「自分じゃなくなってしまう」のです。

 

──なぜ日本人は幸せを感じにくいのか? その答えが段々と分かってきたような気がします。

 

例えば、「年収1千万円」を目指すとします。日本人は、家族や自分の時間、心身の健康を犠牲にして死ぬ気でがんばります。そして1千万円が視野に入り始めると欲が出てきて、さらなる犠牲を払って2千万円を目指してしまう。まさに苦しいだけの「線」を引き続け、「足りない、もっともっと」と死ぬまで幸せになれない無間(むげん)地獄です。

そんな状況から抜け出すべく、「最高の瞬間」だけにフォーカスして、余計な物事を削ぎ落として欲しいんです。

 

──その削ぎ落とし方が詰まっているのが『超ミニマル・ライフ』ということですね。最後に、読者の方々に一言いただけないでしょうか?

 

幸せは“増やす”先ではなく、“減らす”先にしかありません。だから、皆さんもぜひミニマルな生き方に挑戦してみてください。僕も書籍を通して並走し、応援しますので。

『超ミニマル・ライフ』

【著者】四角大輔

【発行】ダイヤモンド社

【発売日】2023年10月4日

【Amazon】https://www.amazon.co.jp/dp/4478118418

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。