世界最大「動く都市」のようなクルーズ船が抱える、大いなる責任とは……?

世界最大のクルーズ船と謳われる「Icon of the Seas(アイコン・オブ・ザ・シーズ)」が1月27日、大勢の見物人に見守られながらフロリダ州・マイアミ港から出航を果たした。

Massimo / X

CGを疑いたくなるほど大きなこの客船。あの「タイタニック号」の5倍の大きさを誇り、乗客定員は最大9950名、重さは250,800総tにものぼるそうだ。

船内は8つの「街」から構成されており、洋上最大となるウォーターパーク、アイスアリーナ、屋内型アクアシアター、40以上ものダイニングやバー、最新技術とトップクラスのシンガーやダンサーによるエンターテインメントプログラムなど、どの年代の利用者においても究極のバカンスが過ごせると謳う。

それだけではなく、本物の草木が生い茂る公園や、免税店やカフェが並んだショッピングストリートなど、細部まで忠実に「街」を再現しているのも、同客船ならではの持ち味だ。

さて、ここで気になるのが、この船の「動力」に関して。

ここまで設備が整った大型客船ならば、さぞかしハンパない動力が働いていることが想像できるが、彼らは現在環境面でもっとも優れた先進的な燃料である「LNG(液化天然ガス)」を用いている。

これに加えて陸上からの電力接続や廃熱回収システムなどを組み合わせることで、より環境面に配慮したクリーンエネルギー動力を実現させているという。

しかし、本船の生みの親であるロイヤル・カリビアン・グループのジェイソン・リバティ最高経営責任者(CEO)は、先日行われた会見で「地球上で最大かつ最悪の船である」、こう表現し話題を呼んだ。

前述したように、本船は液化天然ガスを用いてクリーンに航行するよう建造されているが、その代わりに温暖化に悪影響をもたらす高レベルの「メタン」が秘めていることはあまり公になっていない。

ICTT(国際クリーン交通委員会)は、本船のメタン排出量が規定値を超えていることを警告する報告書を発表し、「船舶燃料としてLNGが使用されるケースが急増している」と指摘している。

“大いなる力には大いなる責任が伴う”とは映画のなかの言葉だが、乗客のみに配慮したサービスづくりは一流とは決して言えないはず。世界最大クルーズ船の魅力を活かした、彼らの今後の動きに注目だ。

Top image: © 株式会社ミキ・ツーリスト
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