飛行機の「機内食」を食べなかっただけで、のちに逮捕。その罪状は……
海外旅行の楽しみといえば、機内食。しかし、その楽しみを一切拒否したことで、思いがけず闇の世界へ足を踏み入れてしまった旅行者がいる。
中央アジアのウズベキスタン発インド行きの便で起きた、とある事件。約3時間半のフライト中、3人の乗客が機内食を一切口にしなかったことが、のちに驚くべき事態へと発展したのだ……。
どうしても機内食を食べられない、とある理由
舞台は、ウズベキスタン・アルマトイ発インド・デリー行きのインディゴ航空6E-1802便。3人の乗客が、約3時間半のフライト中、食事や飲み物を一切口にしなかったのだ。
客室乗務員は彼らの様子に不審を抱き、体調を気遣ってさまざまなサービスを提供するも、3人はそれを頑なに拒否。この異様とも取れる行動に、機長はデリー空港の税関職員へ通報し、到着と同時に彼らを迎え入れるよう手配したという。
デリー空港に到着後、3人は税関職員によって別室へ連行された。X線検査やボディチェックが行われたが、怪しい点は何も見つからない。しかし、職員たちの「何かがおかしい」という直感は的中する。
個別に丹念な事情聴取を行った結果、3人は観念し、直腸内に「金塊」を隠していたことを自白したのだ。職員が確認したところ、合計約439グラム、日本円にして約570万円相当もの金塊が見つかったという。
金価格高騰によって加速、
巧妙化する密輸
近年、世界的な金価格の高騰を背景に金塊密輸が後を絶たない。東京税関の報告によると、2024年には過去5年間で最多となる金塊密輸が摘発されたとのこと。手口はますます巧妙化しており、今回の事件のように、体内への隠匿もそのひとつだ。
また、金塊密輸の背景には「金」という資産の特性もある。金は世界共通の価値をもち、持ち運びが比較的容易なため、違法な資金移動やマネーロンダリングに悪用されやすいのだ。
安全な空の旅に潜む
プロフェッショナルたちの静かな戦い
今回の事件は、CAの冷静な状況判断と税関職員の執念深い捜査によって金塊密輸を未然に防いだ、見事な事例といえるだろう。
我々が何気なく体験している空の旅。その安全の裏側では、今日も多くのプロフェッショナルたちが、私達の知らないところで、密輸やテロなどの脅威と戦っている。
次に飛行機に乗る時、機内食を断る前に、今回の事件を思い出してみてほしい。もしかしたら、あなたの何気ない行動が、空の安全を守るプロたちの目には重要な手がかりとして映っているかもしれない。