いま、最も歓迎される旅行者「貢献トラベラー」って?
社会貢献活動は、「旅の楽しみ」のひとつになりつつあるようだ。
調査・分析や新規事業開発支援コンサルを担う「SEEDER株式会社」が、Z世代の旅行価値観に焦点を当てた調査レポート「Z世代に関する行動・価値観-ミニトライブレポート 貢献トラベラー旅行体験の未来-」を発表。当世代にみられる、旅をしながら社会貢献活動をする旅行者「貢献トラベラー」の実態を明らかにした。
社会活動はアクティビティ
ボランティアに代表される社会貢献活動は、ひと昔前まで「強い問題意識を感じた人のみが取り組むもの」というイメージが強かった。しかし、社会問題が顕在化する昨今、強い当事者意識をもつZ世代にとって、社会貢献は多くの人にとって関心領域になりつつある。できる限り参加したいと考える人が増えているようだ。
そんなZ世代の傾向としてあげられるのが、SEEDER社のレポートいわく、ソーシャルグッドな活動に“エンターテインメント性”を見出しているということ。
同レポートによると、Z世代は趣味や人との交流を楽しみながら行うことで、活動の義務感や責任感を軽減。社会貢献を「楽しみ」に昇華することで、負担を感じずに実践できているのだそうだ。
「旅先なのに」ではなく「旅先だから」
社会貢献をもっとも楽しめる場所はどこか?
これを旅先に見出したZ世代が今、「貢献トラベラー」と化しているらしい。貢献トラベラーたちは、社会貢献活動を、旅行中に楽しむコンテンツの一つとしてみなす。具体的には、地域の有機農家の作業を手伝ったり、人手不足の地元旅館で働いてみたりするなどの体験が挙げられた。ミレニアム世代のように、単に「民泊」するのではなく、地元住民と一緒に課題に向き合うことで、“同じ視点”を得る。そうしたより親密な関わり方を通して、地域のニッチな魅力を再発見したいと考えているようだ。
また、社会貢献活動が日常化したとはいえ、周りの目も気にするという心情もZ世代の特徴らしい。娯楽を建前として社会貢献をすることで、「意識高い系」や「承認欲求が強い人」と見なされるのを避ける狙いもあるのだとか。
普段とは違うコミュニティで、人目を気にせず課題に取り組む。そんな機会を欲するZが、「貢献トラベラー」となり日本各地を巡っていることをあなたは知っていただろうか。
受け入れ先のニーズも
双方にとってのwin-win
ところで、「貢献トラベラー」がZ世代に顕在化したのは、受け入れ先の変化も大いに関係していそうだ。
例えば「おてつたび」。これは、地域事業者と旅をしながら働きたい旅行者をマッチングするサービスだ。現在、同サービスには全国1300もの事業者が「おてつたび先」として登録しているが、この数は一昨年の2倍以上にもなる。
「おてつたび」代表は、この急成長について、「コロナ禍で技能実習生が来なくなった農家や、ファンづくりを課題とする地域や事業者から相談を受けるようになった」と話し、貢献する側だけでなく、貢献される側の需要も高まっていることを指摘している。
「一宿一飯の恩義」なんて言葉もあるように、旅先で世話になった人に恩を返す習慣は昔からあった。だが令和の時代、その関係性はより対等で、win-winなものになりつつあるのかもしれない。
地域と同じ視点に立ち、新たな自分、その土地の魅力を発見する――若き貢献トラベラーたちは、今もっとも歓迎される旅行者なのだろう。