最愛の人が眠る場所は森の中。新しい葬送のかたち「グリーン葬」

「終活」という言葉が身近になり、自分らしい最期を模索する人が増えている。従来の慣習にとらわれず、自然に還ることを望む人も少なくないだろう。そんななか、従来の墓地や葬儀の概念を覆す、新たな潮流を予感させてくれる葬儀スタイルが、いまアメリカで人気を集めているらしい。

墓石ではなく、木々が並ぶ風景に眠る
新しい選択肢「グリーン葬」

舞台はミネソタ州。緑豊かな森が広がるこの地には、従来の墓地のイメージを覆す埋葬林が存在する。墓石が立ち並ぶ代わりに、生い茂る木々に囲まれた静寂の世界が広がっている。日刊紙「The Minnesota Star Tridune」が報じたところによると、そこは自然回帰型の埋葬を提供する企業「Better Place Forests」が運営する埋葬林。2021年にミネソタ州で初めて開設されたこの森では、故人の遺灰を木々の根元に埋葬し、自然へと還す「グリーン葬」を提供している。

じつは、こうしたグリーン葬の市場は拡大傾向にあるようで、調査会社「Emergen Research」によると、グリーン葬の市場規模は世界的に拡大しており、2021年の5億7200万ドルから2030年には約12億ドルに達すると予測されている。従来の埋葬方法に環境負荷を感じ、より自然でサステイナブルな選択肢を求める人が増えていることが背景にあるのだろう。

「私らしさ」で彩る、最期の選択

この埋葬林で注目すべきは、自然に還るという点だけではない。広大な森の中から、故人の人柄や家族の想いに合った木を選び、その根元に遺灰を埋葬できるという、パーソナライズ化されたサービスを提供している点も、多くの人を惹きつける理由のひとつ。

例えば、25年間連れ添った夫を亡くしたある女性は、生前故人が愛したカエデの木を選んだ。彼の眠る森を訪れるたびに、「世界にとって最も大切な時間」だと語る女性の言葉からは、自然の中で最愛の人と穏やかに過ごせる喜びが伝わってくる。

さらに興味深いのは、「Better Place Forests」がオンラインサービスにも力を入れている点だ。オンラインでの事前相談やバーチャル葬儀など、デジタル技術を活用したサービスを展開し、時間や場所にとらわれずに故人を偲ぶ新たな方法を提案している。

遠方に住む家族もオンラインで葬儀に参列したり、故人との思い出を共有したりすることが可能になるなど、デジタル時代に対応したグリーフケアの形といえるだろう。同社の取り組みは、自然回帰とテクノロジーの融合によって、弔いのあり方を大きく変えようとしているのかもしれない。

最愛の人が眠る場所、その場所に集う人々の想い、そして故人を偲ぶ時間。それらすべてが、より自由に、そしてパーソナルなものへと変化していく未来を予感させる。

👀 GenZ's Eye 👀

先日散骨を経験し、海に還りたい人がいるなら森に還りたい人もいて当然だと感じました。儀礼やルールよりも、故人が望んだ形で埋葬されることは前向きな選択。葬儀や弔いの世界には、これまでテクノロジーがあまり介入してきませんでしたが、オンラインやバーチャルでの葬儀は、時間的制約があるなかでも、故人を偲ぶ時間を共有できます。こうした新しい形式は、今後より肯定的に広まっていくのではないでしょうか。

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TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。