ポルノは“悪”なのか。「アダルトコンテンツ撲滅」に揺れる米国

「表現の自由」は、民主主義社会の根幹をなす普遍的な価値観だ。しかし、その自由は、常に議論の的となってきたのも事実。とくに、性表現に対する規制は、時代や文化によって大きく異なる。そして今、アメリカでその自由を揺るがす可能性のある法案が、波紋を広げている。

“アダルトコンテンツ撲滅”を掲げる
「Project 2025」

2025年施行を目指す「Project 2025」は、ポルノの制作・配信を全面的に禁止する、という衝撃的な内容だ。違反者には厳しい罰則が科せられる可能性もあり、実現すればアメリカ社会、そしてインターネット上に大きな変化が予想される。すでにポルノパフォーマーからは、表現の自由や生活の危機を訴える声が上がっている。

メディア「Mashable」によると、Project 2025を支持するのは、主に保守派層。彼らは、ポルノが性犯罪や性暴力の増加、青少年への悪影響を招くと主張。いっぽうで反対派は、表現の自由の侵害、そして、規制の有効性や現実性に疑問を呈している。

ポルノパフォーマーたちの抵抗
「Hands Off My Porn」が訴えるもの

Project 2025の施行に危機感を募らせるポルノパフォーマーたちは、「Hands Off My Porn」キャンペーンを立ち上げた。法案の危険性を訴えるデジタル広告を、激戦州を中心に展開している。

「Mashable」の記事に登場する、ポルノパフォーマーCherie Devilleさんは、「これらの政策は、私たちの仕事、権利、そして安全にコンテンツを作成する能力を損なう可能性がある。これは、私たちの生活を守り、セックスワーカーがさらに社会の隅に追いやられないようにするためのものだ」と、切実な想いを訴える。

検閲と監視の時代へ
デジタル空間における「表現の自由」

Project 2025が突きつける問題は、単なるポルノ規制の是非だけではない。インターネットにおける表現の自由、そしてプラットフォームの責任という、より根深い問題を浮き彫りにしている。

たとえば、ノースカロライナ州ではすでに年齢確認を義務付ける法律により、大手ポルノサイト「Pornhub」へのアクセスがブロックされている。Project 2025は、このような規制を全米レベルに拡大、強化しようと働きかける。ただ、性的コンテンツといえど、こうした動きは、政府による検閲を許し、インターネット上の多様な意見や文化を萎縮させる可能性を孕んでいるとの意見も。プラットフォーム側にも、ポルノコンテンツに対する更なる監視と規制強化が求められることになるが……。

「表現の自由」は、誰にとっても保障されるべき権利であるいっぽう、その行使には責任が伴う。テクノロジーが進化し、情報が国境を越えて拡散する現代社会において、私たちはあらためて「表現の自由」と向き合い、その在り方を問われているのかもしれない。

👀GenZ's Eye👀

同意のないセックスや、避妊しないまま行為におよぶ描写を含むアダルトコンテンツにはもちろんNOのスタンス。だけどすべてがそうとは限らないし、性欲は人間の三大欲求のひとつ。エロティシズム的な表現は、古来から芸術として認められてきたはず。

規制の対象を一概にするのではなく、悪質なコンテンツに限定すること。そして、そうしたコンテンツにも影響されないような、正しい性の知識を提供することの方が大切なんじゃないかな〜。未成年が性の知識をインターネットから得ているいまの状況にこそ問題があるような気がしちゃいます🤔

Top image: © iStock.com/Eshma
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。