AIの意外な苦手分野。彼らはなぜ「数学」でつまづくのか?

まるで人間のように自然な文章を作り出す「ChatGPT」をはじめとするAIライターたち。彼らの登場は未来への期待を抱かせると同時に、ある種の不安もよぎらせる。「AIは人間の仕事を奪ってしまうのではないか?」と。

しかし、全知全能であるかに思えるAIにも、じつは不得意な教科があるそうだ。

「1+1=2」の世界で
迷子になるAIライターたち

高度な文章を生み出すAIは皮肉にも簡単な計算問題を解くことが苦手である。こう紹介するのは米メディア「TechCrunch」だ。詳しく見ていくと、これがなかなかにオモシロい。

例えば、ChatGPTは「5万7897×1万2832」という掛け算に「7億4202万1104」という誤答を出した。正しくは「7億4293万4304」だ。これは、ChatGPTだけの問題ではない。「Anthropic」のClaudeは、基礎的な文章問題を解くことができず、「Google」のGeminiは二次方程式が理解できない。「Meta」のLlamaにいたっては、単純な足し算にも苦労しているというのだ。

その原因のひとつとして考えられているのは、「トークン化」というAI特有の言語処理方法

AIは文章を処理する際、単語や句読点を「トークン」と呼ばれる小さな単位に分解する。このとき、数字が本来の意味を持つひとまとまりとして認識されず、バラバラの記号となってしまうケースがあるという。例えば「380」は1つのトークンとして扱われるのに対し、「381」は「38」と「1」という2つのトークンに分割されてしまうというわけ。AIにとって、数字はただの“記号の羅列”でしかないのかもしれない。

ウォータールー大学(カナダ)のAI専門家Yuntian Deng氏の研究によれば、ChatGPTのデフォルトモデルであるGPT-4oは、4桁x4桁以上の掛け算になると正答率が30%未満にまで低下するという。

Deng氏は「多桁の掛け算は、言語モデルにとって難しい課題である。途中の計算段階での誤りが最終的な結果に影響を与え、誤った答えを導き出してしまう可能性がある」と述べている。

さらに、AIが大量のデータからパターンを学習する「統計的な機械」であることも、計算が苦手な原因のひとつ。彼らは過去のデータに基づいてもっとも確率の高い答えを導き出すことは得意であっても、決してその数字が表す「意味」を理解しているわけではない。

AIの進化は「人間の思考」
を解き明かすのか

とはいえ、AI開発は日進月歩で進化している。OpenAIが新たに開発したモデル「o1」は、思考を取り入れることで、9桁x9桁の掛け算を約半分の確率で正答できるという。このモデルは、人間とは異なる方法で問題を解決している可能性があるとDeng氏。

AIの計算能力の向上は、自動運転や医療診断など、様々な分野で革新的な進歩をもたらす可能性を秘めているが、その一方でAIが人間の仕事を奪ったり、倫理的な問題を引き起こす可能性も否定できない。AIと共存する未来に向けて、それを使う側の我々はAIの可能性と課題について、より深く考えていく必要がありそうだ。

👀GenZ’s Eye👀

我々デジタルネイティブのZ世代は気づいている。近い将来、自分たちがAIともっとも深く関わり、日常的に使用する最初の世代になると。まだ何者になるかはわからないが、今は目の前の課題を克服し、未来に向けて歩みを進めている。そう考えれば、ZもAIも似た者同士なのかもしれない。

まだAIが発展途上の間に我々に出来ることは、AIとの共存を考えるとともに、AIでの生成を凌駕する思考力・想像力を身につけること。似た者同士ならば、負けるわけにはいかない。無限に生成されるアイデアをうまく活用することで、AIでは作れない未来を形づくる。これはどんな時代になっても人間のものであってほしいものだ。

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TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。