「AI彼女」にガチ恋する若者たちが増殖中

マッチングアプリでさえ、なかなかうまくいかない恋愛。だけどもしも、あなたの理想をすべて叶えてくれる「完璧な恋人」が、簡単にスマホで手に入るとしたら……?

AI技術の進化によって生まれた「AI彼女アプリ」が新たな社会現象として注目されている一方、思わぬ落とし穴も。AIとの恋愛が招く未来とは。

“都合の良い関係”を求めて
AI彼女にハマる理由

昨年「Snapchat」がチャット中にユーザーの好みを学習する仮想の友だち「My AI」を導入したことで、「AIガールフレンド」の検索が2,400%増加したと「「The Conversation」が報じた

今では何百万人もの人々が、チャットボットを使って恋愛のアドバイスを求めたり、不満をぶちまけたり、エロティックなロールプレイに興じているという。ユーザーは好みの外貌、性格を設定し、自分だけの理想のAI彼女を作ることができる。会話はまるで人間とチャットしているかのようで、AIはユーザーの言葉に共感し、パーソナライズされた言葉で癒しを提供してくれるらしい。

しかし、なぜ人々は生身の人間ではなく、AIに心を許すのだろう?

その背景には、SNSの普及などによって現代社会がますます孤独感を増幅させている現状があるのではなないか。アメリカの調査では、過去10年間で人々が友人と過ごす時間は約40%減少した一方で、SNSの利用時間は2倍に増加。皮肉にも、私たちはつながりを求めれば求めるほどに孤独を深めているのかもしれない。

AI彼女アプリの魅力は、いつでもどこでも、自分のペースで「理想の相手」とコミュニケーションを取れるという点にある。AIは決して否定せず、常に肯定的な言葉をかけてくれる。まるで、“デジタルセロトニン”という甘い蜜を分泌するかのように。

「寂しがりや」につけ込む危険性
AI恋愛が招く未来とは

しかし、エセックス大学の経営学准教授であるJames Muldoon氏は「AI彼女がもつ魅力にこそ危険が潜んでいる」と警告する。AIとの疑似恋愛に依存することで、現実の人間関係を築くことが困難になる可能性も否定できないということらしい。たしかに、AIは決して倫理や道徳観を持っているわけではないため、開発した企業の思惑によって私たちは簡単に「承認欲求ビジネス」のターゲットになり得てしまう。

実際に、AI彼女に感情移入しすぎた結果、高額な課金をしてしまうケースも報告されている。2023年には、AI彼女との「エロティックなロールプレイ機能」が一時的に停止され、ユーザーが抗議活動を起こす騒動も。俄には信じ難いが、AIとの関係に本気になる人は後を絶たない現状だとも。

AI技術は今後も進化を続け、より人間らしいコミュニケーションを取れるようになるだろう。使い方次第では、AI彼女アプリは寂しさを紛らわすツールとして、あるいはコミュニケーション能力を高めるための練習台として有効に活用できる可能性も秘めている。

けれど、いっぽうでAIとの距離感を一歩でも誤れば、私たちはリアルな人間関係を築くことから遠ざかってしまうかもしれない。AIとの共存は、人類にこれまで以上に「人間らしさ」とは何かを問いかけているのではないだろうか。

👀GenZ's Eye👀

AIをセラピーとして活用する人もいるし、AI伴侶アプリの登場にはさほど驚かない……が、利用者の7割が男性というのには驚き。

やはり、男性は「孤独感や弱みをさらけ出してはいけない」というプレッシャーを現実世界で感じやすいのだろうか。伴侶アプリの男性ユーザーの多さは、彼らが日頃感じる“現代社会の生きづらさ”も反映しているのかもしれない。

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