相談相手=ChatGPT、という人が増えているらしい
苦しくて辛い時、あなたは誰に相談するだろう。友人?家族?恋人?――きっと自分の近しい関係にある人の顔を思い浮かべたはずだ。
ところが、近い将来その相談相手は大きく変わるかもしれない。
「相談相手=ChatGPT」
という人が急増中
世界中で月間2億人とも言われるアクティブユーザーを抱える、ご存知「ChatGPT」。現在、この人工知能チャットボットをセラピーとして活用する人が増え始めているらしい。
アメリカで人気のポッドキャスターShannon McNamuraは、自身がChatGPTをセラピーとして使う様子をTikTokに投稿。日記やセラピストと同じようにチャットボットに向きあう姿をフォロワーたちに披露している。
Shannonの他にもChatGPTに相談を持ちかける人は後を絶たないようで、TikTokでは、Z世代クリエイターたちがChatGPTをセラピストとして活用した経験を赤裸々にシェアする人たちも。
彼らのビデオを目にした人たちからは、「賢い方法」「私もセラピーとして使っている」といったコメントが散見されることからも、想像以上に多くの人々がAIにセラピストとしての活路を見出していることがうかがえる。
ストレス社会で求められる
「無給のセラピスト」
AIにパーソナルな相談をするってどうなのだろう?個人情報利用に対するリスクもありそうなものだが……。なにより、人間のセラピストほど質の高いセッションを受けられる気もしない。それでもなぜ、AIに救いを求める人たちが増えているのか。
様々な推測ができそうだが、理由のひとつとしてよく聞かれるのは、ChatGPTが「Unpaid Therapist(無給のセラピスト)」であること。
「米国不安・うつ病協会(ADAA)」の報告によると、現在アメリカでは人口の3.1%にあたる680万人の成人が全般性不安障害(GAD)に罹患しているそうだが、同国における、セラピーセッションの平均費用は1回につき約100ドルから200ドルとかなり高額。多くの人にとっては手の届かないものとなっている。
そうした状況のなか、2022年に突如現れたChatGPT。その機能は言わずもがなだが、ユーザーの質問に対しまるで実際の人間と対話しているようなスムーズな会話形式のやりとりのなか、誰にも打ち明けられなかった心の内の言葉をチャットに乗せてボットからコメントを引き出すような使い方をしてみたとしても不思議ではない。低料金で24時間365日アドバイスをくれる、身近な“駆け込み寺”のような存在として──。
プライバシーの漏洩といったリスクより、むしろ「必要なときに気軽にアクセスできることの方が現代人にとっては大きなメリットになっている」と報じるのは、じつのところ『Newsweek』だけではない。
本物のセラピストは要らない?
問われる“生身”の人間の価値
ChatGPTを「Unpaid Therapist」として利用することについて、専門家たちは、「即時性のあるメンタルサポートとして、貴重なツールになり得る」という点では合致するものの、深刻なメンタル危機や複雑な問題を扱うことについては避けるべきだとしている。
実際、ベルギー人の男性が「Chai」というAIボットと6週間にわたって対話した後、自ら命を絶つという悲劇も昨年起きている。
入力された文脈を基に返答を作成することはできたとしても、(セラピストの必須能力ともいえる)相手のボディランゲージや表情から判断したり、反対に身体を使って共感を示したりすることはAIボットには不可能。
ただ、これとて「現状では」という表現が相応しいと思えるほど、AIの発展は日進月歩。いつの日か、本当にチャットボットが人間のメンタルヘルスサポートの一助となったとしても、もはや誰も驚けないのではないだろうか。
だからこそ、だ。
窮地に立たされている人の駆け込み場所がそれだけにならないように。この先も差し伸べられる手に温もりがあるように。人間として何ができるか、そこを考えていきたいものだ。