Z世代が作る、新たな「貧困の定義」

貧困」とは、貧しくて生活に困っていること。そんな当たり前のワードを、Z世代である僕らは少しずつアップデートし続けている。

よくニュースで取り上げられている「若者の貧困問題」。だが、路上で生活している若者は滅多に見ないし、実態がイマイチ掴めないのが現状だ。

ひと昔前の日本には、高級レストランやハイブランド、タワマン生活などによる「華やかな生活」が“幸せの象徴”として、若者が追い続ける一種のゴールになっていたと聞く。だが、現代では従来の華やかな生活を目指しつづける人もいる一方で、「それって、本当に幸せなの?」と自分なりの幸せを探し始める若者も増えてきた。

まさしく、それが我々Z世代ではなかろうか。

物価高騰や社会情勢によって、やむなく「華やかな生活」を諦めてしまったのだと大人たちは推測したがるけど、僕らはそこまで馬鹿じゃない。それだけが理由ではなく、自分自身の「精神的な部分」に何らかの“変化”があったことをちゃんと理解している。

「推し活」による貧困と、思考の変化

若者の貧困の要因を考えるうえで、これまでと圧倒的に異なるのは、いわゆる「推し活」と呼ばれる消費行動の普及。ジャンルやカテゴリは異なれど、Z世代の多くは心の中にそれぞれの「推し」を宿しているはずだ。

現にZ世代の「推し活」に対する消費金額は年々増え続けている。下のグラフはZ世代の「年間推し活代」を集計したもので、振れ幅が大きいものの平均額は4万6650円と、かなり高め。推しに対する思いが強ければ強いほど、消費金額も増えるのだろう。また、年齢が上がるにつれて推しへの消費金額が上昇することもわかっている。

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しかし、僕らは「推し活」を楽しみながらも頭の片隅に多くの悩みを抱えている。

悩みの大部分は、「お金と時間の管理」だ。

グッズ代や投げ銭代は推しに対する熱量のパラメータとして表せるが、Z世代が自由に使えるお金は限られているし、加えて仕事・学校など日常生活との時間のやりくりもしなくてはならない。これらは、Z世代が逃れることのできないストレッサーになっている。

そして興味深く感じたのは、Z世代は「推し活」という明確なお金の使い道があるため、その他の無駄な出費に対して強い抵抗感を持っているということ。我々のお金の使い方に対する思考の変化はここから始まった。

「いかにコスパよく、タイパよく楽しめるか」を常に考え尽くしているZ世代はSNSに超敏感で、低コスパの居酒屋ボリューム重視の定食、無料漫画や無料コンテンツの情報を互いにシェアし合う習慣を自然と身につけた。欲しいモノを廉価で購入できるサービスも格段に増えたため、Z世代は出費を抑えながらも「推し活」を存続させるため、輝かしいSNSの裏で日々たゆまぬ努力をしている。

若者を追い詰める外的要因

さらに、Z世代の貧困は「推し活」だけが要因ではないのも事実。

3人に1人が非正規雇用者の現代社会では、所得の不安定格差の拡大が強く懸念されている。東京都の最低賃金は1072円(2023年8月現在)だが、地方では800〜900円もザラであるため、正直僕ら学生にはキツすぎる現状。加えて「103万円の壁」により、時間を持て余していても稼げるお金の上限が決まっている。

また、学生が奨学金を自分で支払うというケースは今も多く、「日本学生支援機構」によると、卒業後に収入の減収により返済を3ヵ月以上延滞している人は2014年度で17万3000人にものぼっているという。それだけでなく、高齢層向けの社会保障負担の増加、電気料金・物価の高騰、増税に次ぐ増税……。(ため息)

ネガティブな社会問題は挙げはじめたらキリがないが、これらの外的要因は若者の不安をジリジリと煽り、先行きの見えない恐怖感を与えているのもまた事実。

「お金がない」=貧困?

たしかに、「お金が少ない」ことはどの世代の人間にとっても悩ましい問題。だが、Z世代は「お金がない=貧困」と捉えていないのではないだろうか。

お金に縛られず生活を楽しむ方法はいくらでもあるし、僕らはそれを新たに見つけることさえできる。低予算で趣味を楽しむ工夫も、若者にとっては醍醐味のひとつかもしれない。

現代では職業やライフスタイルなど自由に選択することができ、それに伴って幅広い「幸せ」が生まれている。確実に「幸せになる選択」を大学の講義で教えてくれるならありがたいけど……現実はそうもいかない。

そのため、「他人と比較しない」ことこそが、僕らが格差社会で幸せを感じるための秘訣ではないだろうか。こんなに物質的に豊かな社会なのに、絶えず精神的な貧しさを感じてしまうのは、なんだかとてももったいない気がする。

Z世代を代表して、世の大人たちへ。

負の感情を減らして、気楽に生きていこうよ。

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