映画好きを自称するなら、この監督を知らないと嘘になる
デヴィッド・リンチ。映画を愛するっていうなら、この名前を知らないのは嘘になる。
デビュー作『イレイザーヘッド』では、不気味で不可解な作品作りが全米で話題となり、次作『エレファントマン』では、生まれつき奇形の男を描いて、アカデミー作品賞にノミネート。切断された片耳を軸に話が交錯していく『ブルーベルベット』で、アカデミー監督賞にノミネート。セックスと暴力と逃避行をテーマにした『ワイルド・アット・ハート』では、カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞。ハリウッドのダークサイドをあぶり出した『マルホランド・ドライブ』でカンヌ国際映画祭の監督賞を受賞している。
また、1990年に放送されて世界中でブームを起こしたTVドラマ『ツイン・ピークス』の続編『ツイン・ピークス The Return』は、昨年度、再び大きな話題を呼んだ。
本作品『デヴィッド・リンチ:アートライフ』では、彼のインタビューや家族の写真、作品や音楽を用いて、自身の人生体験が映画をどう形作ったかを解き明かしていく。
25時間にも及ぶ
ロングインタビューを敢行
インタビューで心を開かないことで有名なデヴィッド・リンチ。そんな彼にドキュメンタリーを撮らしてもらいたいとリクエストしたのは、長年、リンチの映画ファンだった監督のジョン・グエン。ジョンは、前作『リンチ1』で、リンチとの信頼関係を築いた経緯から、本作品の了承を勝ちとった。
自身について多くを語ってこなかったリンチではあったが、自分自身の人生について語るきっかけとなったのは、2012年の末娘の誕生だったとのことだ。本作は、人生を振り返る時期にさしかかった父から娘へのギフトという側面も併せ持っているようだ。
25時間にも及ぶロングインタビューでは、リンチにリラックスしてもらうために隠しマイクで話を拾うなどの工夫を凝らしたとのこと。結果、生い立ちを友人に語るような等身大のリンチを収録することに成功している。
禁断のアトリエで
裸になったリンチ
撮影は、リンチが普段は独りで作品を制作しているアトリエで行われた。ここで、約2年半に渡って密着取材が行われた。じつはこのアトリエには、かつては、友達だけでなく家族でさえ寄せつけなかったそうなのだ。
多くの人はリンチを映画監督として知っている。しかし、彼の原点はアーティストだ。フィルムに収められた一心不乱に絵画を描く姿は、とても印象的。今までは、何もかもをオープンにすることはなかったリンチだったが、曽祖父母の時代から撮りためた1,000枚もの写真をすべてジョンに見せてくれたとのことだ。
さらに、リンチの話に合わせて劇中に登場する自身の絵画、彫刻、映像作品は、40年分の作品から選ばれたのだとか。本来、リンチは、自分の映画について話したがらず、作品のアイディアをどこから得たのかが分かりにくいことでも有名。
そんな彼が、アトリエで愛娘と一緒に創作に没頭する様子や幼少時代からの数多くのアート・ワークにアプローチした映像は、かなり貴重とも言えるだろう。
『デヴィッド・リンチ:アートライフ』
2018年1月27日(土)より新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷ほか全国順次公開。公式サイトは、コチラ。
©Duck Diver Films & Kong Gulerod Film 2016