働けど、働けど。稼いだ銭は苦かった。

毎年、2月の春節(旧正月)が近づくと中国国内では、出稼ぎ労働者の帰省ラッシュが話題になる。どこの国にも帰省ラッシュは存在するだろうが、中国のその規模はハンパない。ロイターによると、今年の帰省客は2億人以上にも及ぶとのこと。

「とにかく金を稼ぎたい」そんな労働者を断続的とはいえ3年にも渡って撮り続けたのは、中国人監督のワン・ビン。ドキュメンタリーを得意とする監督だ。本作『苦い銭』でも、泥臭い人間に焦点をあてながら、現代中国の変化する実態を浮き彫りにしている。

30万人もの人間ドラマ

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このドキュメンタリー映画のメイン舞台は、上海から西へ149km、車で1時間半の距離にある浙江省湖州(せっこうしょうこしゅう)の織里(じぃりー)。湖州は、昔から養蚕が盛んな土地でハイクオリティーの「湖州シルク」で栄えたことで知られている。

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特に織里には、無数の縫製工場が乱立している。そして、この街の住民の80%は、雲南、貴州、江西、安徽、河南各省の農村出身のからの出稼ぎ労働者だ。その数は、じつに30万人以上なんだとか。

田舎から街に出てきて働きはじめる少女、金が稼げずに酒に逃げる中年男、仕事ができずにヤケを起こす青年、喧嘩が絶えない共働きの若夫婦…。本作には、せつなくて愛おしくなる人たちが何人も登場するのだ。

1元の金に一喜一憂

※1元=約17円(2018年1月調べ)

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本作品の中で、ある男が口にする時給は、16〜18元(約275〜310円)。ちなみに、昨年、日本では、最低賃金を引き上げて全国平均で時給1,000円を目指す目標が掲げらた。もっとも、民間からの反発要求は時給1,500円。これは、欧米各国の都市部においての最低賃金の目標額と並ぶ。上を見たらキリがないけど、下を見てもキリがない。

だって、時給300円でアルバイトする気になるだろうか?しかも、朝から晩までと、労働時間は限りなく長い状況でだ。しかし、それでも彼らは働かざるを得ない。出稼ぎ労働者たちの過酷な労働の日々、思わず感情をぶつけてしまうやるせなさ、賃金を受け取った時の失望…。そんな中国人の素顔をカメラは、リアルに捉えている。

出稼ぎ労働者と
日本の100円ショップの関係

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浙江省の中には、義鳥(いーうー)という街がある。本作中で、列車の中で出稼ぎ労働者が情報交換のために「働いている工場の排出ガスが危険だ」と印象的なシーンがあるのだけど、その工場が存在するのが、義鳥なのだ。

この街には、「義鳥マーケット」という世界最大の日用雑貨卸し売り場があり、7.5万店舗の中では、170万種類以上の商品が扱われているのだとか。家電製品から、家具、文房具、玩具、化粧品、手工芸品、衣料品、寝具、革製品、ニット製品まで手に入らないものはないと言われているほど。

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1店舗に3分かけて、1日8時間かけてマーケットを回ると1年半もの時間を要する売り場には、世界中からバイヤーが安価な日用雑貨を求めて集まってくる。特筆すべきは、日本の100円ショップの品物のほとんどは、この街の商品とのことなのだ。僕たちが、安いという理由で買っている商品の陰には、安価な賃金で過酷な労働に耐えている人たちが存在する。

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拡大するグローバル経済がもたらす弊害や現実。『苦い銭』を観れば、そういった社会問題を改めて考えるきっかけになるはずだ。

『苦い銭』
2018年2月3日(土)より、 シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー。公式サイトはコチラ

©2016 Gladys Glover-House on Fire-Chinese Shadows-WIL Productions

Reference:ロイター
Licensed material used with permission by 苦い銭
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