公開当時、フランスで上映禁止となった問題作
昨今、テレビやネットで連日のように世間をにぎわせている不倫問題。
これほどまでに不倫が流行っているのは、IT技術の進歩によるところも大きいのだと想う。実際、ゲーム感覚で複数の相手と不倫を愉しむ者もいるようだ。
かつて、ヨーロッパにおいて「恋愛は12世紀の発明」と言われていた。が、じつは、そのベースが不倫だったことはあまり知られていない。また、歴史的な観点からみれば、古今東西の社会で様々な不倫を禁じる試みが行われたけど、それらの大半は失敗に終わってしまったとのこと。
本作品『危険な関係』は、フランス貴族社会を舞台にW不倫をする夫婦の物語。外交官の夫、美貌の若妻。世間的にみれば眩いパリの社交界で注目を集める2人。だが、密かな愉しみは、なんとお互いの不倫相手とのセックスを報告しあうことだった。
早すぎた傑作
『危険な関係』は、公開当時、本国のフランスで上映禁止となった。また、海外輸出禁止にもなったという経緯を持つ問題作。
しかしながら、1960年代のパリの上流社会を描くモノクローム映像は、どこまでもスタイリッシュ。
また、恋愛の駆け引きを巧みに描いたストーリー展開からは、一時も目が離せない。その完成度の高さは、約60年もの時間を経たとは想えないほどだ。
夢の豪華共演
女たらしの主人公を演じたのは、フランス映画史上で伝説の俳優と称されるジェラール・フィリップ。女性を巧みに口説き落とすシーンでは、彼自身のモノローグによって臨場感たっぷりで、僕自身がその場面に入り込んでしまったように感じられた。
また、妻役を演じるのは、ヌーヴェル・ヴァーグ(1950年代後半から1960年代前半にかけてのフランスで自由に映画制作を行った若手グループ)のミューズであったジャンヌ・モロー。
ジャンヌは、フランス映画界を象徴する大女優として愛され、昨年他界した。そんな彼女の出世作のひとつとなったのが、本作品なのだ。
さらに、本作後の映画『男と女』でセンセーショナルを巻き起こしたジャン=ルイ・トランティニャン。そして、前衛的な作品で知られる作家のボリス・ヴィアンなど、かつてない夢の豪華共演となった。
監督はプレイボーイ
本作品でメガホンをとったのは、ロジェ・ヴァディム監督。
プレイボーイとして有名な彼は、美貌の女優たちと浮名を流してきた。特筆すべきは、ブリジット・バルドー、カトリーヌ・ドヌーヴ、ジェーン・フォンダなど、そうそうたる顔ぶれなのだ。
著書『我が妻バルドー、ドヌーヴ、J・フォンダ』では、抱いた女優との恋愛遍歴を告白している。
ちなみに、本作品で出演しているアネット・ヴァディムは当時のワイフ。この監督は、自分の妻を映画に出演させるのが得意技みたい。4人のワイフが全員女優なのは、あのリュック・ベッソンと同じ。そう言えば、ロジェもリュックもフランス生まれ。
うーん。フランスの映画監督は、どうやら女優を口説くのが好きなようだ。
劇中を彩るのは、ジャズの名曲たち。今宵は、大人の世界に一歩、足を踏み入れてみるのはいかがだろう?
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『危険な関係』
2018年3月24日(土)より、YEBISU GARDEN CINEMAにて絶賛上映中。公式サイトはコチラ。