真っ白な「ロードムービー」

ひとりの少年が雪の中を歩き、走り、呼吸して、立ち止まり、ふざけて、見つめ、眠る。誰にも会うことなくただひとり彷徨うように真っ白い世界を冒険する。

たったそれだけの物語。でも、誰が1本の映画をつくれるとイメージできただろうか。

映画『泳ぎすぎた夜』は、6歳の少年が雪が降り積もる街で迷子になる。ただ、それだけの何も起こらない物語だ。いや、コレはもしかしたら、美しい79分の詩なのかもしれない。読み終わった後、多くのことを深く語りかけてくるからだ。

雪で覆われた青森の山あいの風景は、幻想的で、魔法がかっている。

こんな不思議な魅力を持った作品に仕上がったのは、国も言葉も異なる2人の監督がコラボした実験作品だからだろう。

五十嵐洋平とダミアン・マニヴェル。日本人とフランス人のタッグ。

でも、じつは、2人のどちらとも、本作品まで子供も、雪のある場所でも撮影をしたことがなかったという。

微笑ましかったのは、2人が駅前のショッピングモールでキャスティングをした時のエピソード。

そこにやってくる子どもに声をかけている時にマズイと気がついたそう。

ま、そりゃそうだ。はたから見れば、知らない外国人とおじさんがイキナリ、子どもを勧誘してたワケだから(笑)。

撮影は、苦労の連続だったという。雪がどの段階でどの程度降るかは、その時になってみないと分からなかったから。

実験的な要素が強い本作が完成したのは、ケミストリーが起こったからに違いない。

真っ白な「ロードムービー」。

たまには、ホッと一息つける映画をお探しの方に。

『泳ぎすぎた夜』
2018年年4月14日(土)より、シアター・イメージフォーラムほかにて公開。公式サイトはコチラ

©2017 MLD Films / NOBO LLC / SHELLAC SUD
Licensed material used with permission by 泳ぎすぎた夜
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。