ドイツで400万人動員の大ヒット!難民問題を笑いで包んだ「上質なコメディ映画」

2015年、ドイツのメルケル首相は、シリアやアフガニスタンからの難民100万人を入国させると発表。その世界的なニュースを記憶している人は多いだろう。ヨーロッパで深刻化する難民問題は、賛成派と反対派が対立して、今でも揺れ動いている。

しかし、島国に住む僕たちにとっては、あまりリアリティが感じられない。どこかの遠い国で起きていること。そう捉えがちだった。ところが、外国人との交流という視点から見えば、日本でも直面しているトピックなのだ。

飛躍的に増えた外国人観光客は、2020年開催の東京オリンピックでひとつのピークを迎えると言われている。国際社会における「ホントのおもてなしとは何か?」という問いに答えなければならないだろう。本作品『はじめてのおもてなし』は、実り多い国際交流のための多くの気づきを与えてくれる。

違いを愛せるか?

物語の舞台は、ミュンヘンにある閑静な住宅地。旧西ドイツだったミュンヘンは、国内でも物価が高いことで知られている。そこで暮らす裕福な家族がナイジェリアから来た難民の青年を自宅に住まわせることから、ストーリーは展開していく。

文化や習慣の違いによる数々のハプニングは、予想以上。一家は、近隣の住民の抗議に直面したり、テロ疑惑をかけられたりして大騒動に発展してしまう。ネタバレになるのでこのへんでやめておくが、本作品で提起されているのは、生まれも境遇も異なる相手への理解である。

とかく重くなりがちは難民問題。笑いというオブラートで包んだ本作は、身近なところから難民について考えるきっかけとなるはずだ。

裕福な家族≠幸せ
難民≠不幸せ

ゆとりのある生活を楽しむアッパークラスの家族。全てを捨てて異国に逃げざるをえなかった難民青年。その幸福度は、言うまでもなく明らかだ。しかし、そんなステレオタイプな思い込みは、ストーリーが進むごとにガラガラと崩れることになる。

仕事引退後の喪失感、家庭での孤独、ワーカホリック、自己アイデンティティの崩壊…。先進国独特のリアルな諸問題があぶり出されていく展開は興味深い。いつの間にか、「裕福な家族=幸せ。難民=不幸せ。」という図式がスクリーンの中で逆転していくからだ。

家族の絆が崩壊して、裕福なはずなのに不幸にしか感じられないドイツ人家族こそ、助けが必要なんじゃなかと思えてくる。しかし、この描写、多かれ少なかれ、僕たち自身にも身に覚えがあるのではないだろうか。

もし、自宅に難民を住まわせるとしたら、どんなおもてなしをするだろう?そんな想像を膨らませながら、この映画を観る。そんなアイディアだって面白いかもしれない。

『はじめてのおもてなし』
2018年1月13日(土)より、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開。公式サイトは、コチラ

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