スコットランド人にとってウイスキーとは「命の水」である
映画『ウイスキーと2人の花嫁』は、5万ケースものウイスキーを積んだ貨物船SSポリティシャン号が座礁した事件の実話をベースにした物語。
ナチス・ドイツによる空襲が激化する第二次世界大戦中、スコットランドの人々にとって命の水であるウイスキーが枯渇してしまう。舞台は、トディー島。そこに住むウイスキーをこよなく愛するスコットランド人を描いた芳香な作品である。
広告、小説、映画
とウイスキー
ウイスキーの広告コピーには、名作が多い。
以前、こちらの記事で紹介した「時は流れない。それは積み重なる。」をはじめ、「すこし愛して、ながく愛して」、「恋は、遠い日の花火ではない。」などウイスキーを熟成させたかのような味わい深さが感じられる。
同じくウイスキーを扱った小説も数多くある。私立探偵フィリップ・マーロウが活躍するレイモンド・チャンドラーが書いたハードボイルド小説「長いお別れ」には、ウイスキーを飲むシーンが多く登場する。
もちろん、多くの映画の世界でも名シーンとして登場するアイテムになっている。ウイスキーとクリエイティブの関係には長い歴史がある。本作も1949年に白黒で映画化(原題:『WHISKY GALORE!』)されたことがある。ちなみに映画のリメイク化権を手に入れてから10年かけて本作品が誕生したとのことだ。
座礁事件の裏側
この物語の中で登場するSSポリティシャン号。座礁した際、船内には、5万ケースを超えるアメリカへの輸出用ウイスキー、バハマ行きの家具、ジャマイカ紙幣などが積まれていたようだ。
船は船底から浸水してしまい、傾くが、船長と乗組員全員が、トディー島の住民によって無事救助された。そして、この時に島民たちは船に大量のウイスキーが積まれていたことを知ったのだ。
ウイスキーは、スコットランド人にとっては「命の水」であるのだが、当時のドイツ軍がイギリスの工業地帯を爆撃した時に、多くの醸造所が破壊されてしまった。そして、英国政府が「膨大なウイスキーを敵の攻撃で失うのなら、いっそ国外に売り払って我が国の軍事費にしてしまおう!」となった。そのため、ついに配給がストップしてしまったというワケだ。
えっ、あのウイスキーも!
沈没寸前のSSポリティシャン号を目にした島民たちは、救助の後、可能な限りのウイスキーを船から陸へ持ち出した。しかし、ウイスキーを押収しようと関税消費庁が島へやって来ることを知った島民は、島のいろいろなところにウイスキーを隠したそうだ。
その種類は多岐にわたり「ホワイトホース」「バランタイン」「デュワーズ」「アンティクリー」「キングランサム」「ジョニー・ウォーカー 赤ラベル」「ジョニー・ウォーカー 黒ラベル」などがあったと伝えられている。
全編スコットランドでロケが敢行され、当時の面影を残す17世紀に建てられた歴史的建造物、名所などの美しい映像も見所の一つ。
現在でも、物語の舞台となったトディー島では、当時のボトルが発見されることもあるとのこと。もしも、この島へ行く機会があったら、散策してボトル探しに繰り出すのもいいかもしれない。
美味しいウイスキーを飲んでいるようにほろ酔い気分になれるから不思議。本作は、ウイスキー好きだけでなく、そうじゃない人もハッピーにさせてくれる作品だ。
『ウイスキーと2人の花嫁』
2018年2月17日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開中。公式サイトはコチラ。
(C)WhiskyGaloreMovieLimited2016