カトリック教会の「タブー」に焦点をあてた禁断の映画

冒頭のシーンから、身の毛がよだった。

そこには、敬虔な神父が悪魔祓いをしている姿が。神父が手をかざす先には、一人の女性。すると突然、女性がおぞましい声で叫びはじめたのだ。とても人間のものとは思えなかった。

エクソシストとは、カトリック教会におけるエクソシズム=悪魔祓いの儀式をすることを許された神父のことを指す。もちろん、オカルト、お伽話、ほら話、都市伝説と片付けることもできる。しかし、悪魔の存在を100%否定することはできないだろう。この映画『悪魔祓い、聖なる儀式』であんなにも豹変した人々を目の当たりにしたならば。

あの『エクソシスト』は
単なるつくり話ではなかった

冒頭シーンの女性だけではない。本作には、憑依された人々が次々と登場する。いきなり暴れ出す者、ケダモノのような声を出す者、白目を剥きながら痙攣する者、わけのわからない言葉を話し続ける者…。

その姿は1973年に公開され、人々を恐怖に陥れた『エクソシスト』のシーンそのものだった。言うまでもなく、首が180度回ったり、背面ブリッジのまま階段を降りたり、緑色の液体を吐くような類のものではなかったが、発狂したような人々の様相は、リアルなだけにそれ以上の衝撃があった。

急増するエクトシストたち

昨年末時点で、カトリック教会における総本山ヴァチカンから公式にエクソシストと認められているのは、404名。うち、ほぼ半数の241名がイタリアに集中しているそうだ。

70年代のイタリアにおいては、30人ほどしかいなかったエクソシストが8倍以上に膨れ上がった計算になる。しかしながら、悪魔祓いの儀式に詰めかける人々に対して、慢性的にエクソシスト不足が起こっているという。

悪魔は実在するのか、否か?

なぜ、イタリアでは、それほど多くの人々が悪魔祓いの儀式を求めるのか?

そこには、同国が抱える社会問題が関係しているようだ。鬱、孤独、貧困、引きこもり、失業、ドラッグ中毒といった様々な闇が炙り出されてくる。つまり、行き場を失った人々の受け皿として教会が存在しており、神父は彼らを支える役割を担っているという側面もあるのだ。

悪魔は、人間の心が生み出した幻影なのか?それとも、実在し、人間に取り憑いてくるのか?

本作において、誘導的なナレーションが一切ないのは、監督の狙いでもあるようだ。すべては、悪魔祓いを目撃するアナタの判断に委ねられている。 

『悪魔祓い、聖なる儀式』
2017年11月18日(土)より、渋谷シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。公式サイトはコチラ

© MIR Cinematografica – Operà Films 2016

Licensed material used with permission by 悪魔祓い、聖なる儀式
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。