YouTubeブロックでロシアがGoogleに「3澗(かん)円」の賠償命令

「Googleが200溝ドル(円換算で約3澗円)の罰金!?」。センセーショナルな見出しが海外メディアを賑わせている。

一体何が起きたのか。英ニュースサイト「UNILAD」が報じた内容を紐解くと、そこには、デジタル時代の言論統制と巨大プラットフォーマーのジレンマが浮かび上がってくる。

発端はYouTubeによる
ロシア国営テレビのブロック

2020年、Google傘下の動画プラットフォーム「YouTube」が、ロシアの国営テレビチャンネル複数局のアカウントをブロックした。理由は、ロシアによるウクライナ侵攻を支持するプロパガンダを拡散していたためとされている。

当然、ロシア側は猛反発。「表現の自由の侵害だ」と主張し、Googleを相手取って損害賠償を求める訴訟を起こした。そして2024年10月28日、ついにロシアの裁判所からGoogleへの賠償支払いを命じる判決が下った。

想像を絶する「2 undecillionルーブル」

問題はその金額だ。聞いても正直想像がつかない2undecillionルーブル。日本円にして数兆円どころではない、まさに天文学的な数字である。英語表記では1の後に0が36個も並ぶ、想像を絶する金額だ。

専門家によると、この金額は「地球上の全資産の合計をはるかに上回る」とのこと。当然、実際にGoogleが支払える金額ではなく、“理論上の数字”に過ぎないという見方が強い。

情報統制の道具?
巨額賠償命令の真意

では、なぜロシアはここまで非現実的な金額を提示したのだろうか?その背景には、ウクライナ侵攻をきっかけに激化する「情報戦」がある。西側諸国とロシアは、互いに異なる主張を展開し、世界世論を自陣に引き込もうと躍起になっている。

ロシアにとって、GoogleやYouTubeのような巨大プラットフォーマーは、自国の主張に反する情報を拡散する“目の上のたんこぶ”のようなもの。今回の巨額賠償命令は、単なる賠償金請求ではなく、プラットフォーマーに対する「見せしめ」であり、「情報統制」の強化を意図したものである可能性が高い。

表現の自由 VS 情報統制
問われるプラットフォーマーの責任

今回のGoogleへの巨額賠償命令は、デジタル時代における「表現の自由」と「情報統制」の難しさを改めて浮き彫りにした。プラットフォーマーは、単なる情報の仲介者ではなく、その影響力の大きさから、事実上メディアとしての責任を問われていると言えるだろう。

UNILADの記事で紹介されているSNS上の反応を見ても、「Googleに同情する」「ロシアのやり方は行き過ぎだ」といった意見があるいっぽう、「プラットフォーマーはもっと責任を持つべきだ」という厳しい声も少なくない。

今後、巨大プラットフォーマーは、国家による情報統制の圧力と、表現の自由を守る責任との間で、ますます難しい舵取りを迫られることになるだろう。

👀GenZ's Eye👀

「表現の自由」は今回のような政治的プロパガンダや、芸術分野でもよく謳われている印象。とくに若い世代は、こうした「自由」というような言葉に敏感で、希望を持つものも多い。

けれど、自由とは秩序の中でこそ楽しめるもの。プラットフォームは表現の自由を確保し、平等な情報発信の場でいなけれないけない。それと同時に、その表現が戦争といった人の命に関わる場合、「管理をしなければいけない」という社会的責任を有しているとも考えられる。Googleがロシアに対して行った統制は、その社会的責任が適用された一例なのではないだろか。

Top image: © iStock.com/MIMI RAGAB
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