「ニューヨーク五番街」200年ぶりの再開発へ
ショーウィンドウが輝く「ティファニー」、華やかな雰囲気の「ルイ・ヴィトン」……。世界中の憧憬を集める高級ブランド店が軒を連ねるニューヨーク五番街は、まさにショッピングの聖地。 しかし、その華やかなイメージとは裏腹に、近年、ある課題が浮上していた。それは歩行者にとって快適な空間が不足しているという問題だ。
人で溢れかえる歩道
現状打破へ、ニューヨーク市の挑戦
ニューヨーク市長Eric Adamsの声明によると、五番街の通行人の割合は全体の70%を占めているにも関わらず、歩道は狭く、歩行者が快適に過ごせる空間が不足している現状が報告されている。特にホリデーシーズンには1時間あたり2万3000人もの歩行者が殺到し、Madison Square Gardenを満員にした場合の人数よりも4000人も多いというから驚きだ。
こうした状況を受け、ニューヨーク市は2024年10月17日、五番街の大胆な再開発計画を発表した。それは、ブライアントパークからセントラルパークまでの区間を「歩行者中心の空間」へと刷新するというものだ。
緑と憩いの空間がプラスされる
進化系ストリート
今回の再開発計画で注目すべき点は、単なる歩道の拡張に留まらない点にある。 計画によると、歩道の面積を46%拡大し、歩行者空間を現在の2倍に拡張するだけでなく、230本以上の新たな植樹を行い、緑あふれる空間を創出するという。 これは、ヒートアイランド現象の緩和にもつながり、環境にも配慮した持続可能な街づくりを目指すニューヨーク市の姿勢が見て取れる。
さらに興味深いのは、その資金調達方法だ。なんでも、プロジェクト費用は再開発による不動産価値や売上税収の増加を見込み、5年以内に回収できる見通しだという。 市の財政負担を軽減しつつ、持続可能な都市開発を実現しようとする、その戦略的なビジョンに、世界中から注目が集まっている。
「歩ける五番街」は
街の価値をどう変える?
近年、パリのシャンゼリゼ通りや、ロンドンのオックスフォード・ストリートなど、世界中の主要都市で、自動車中心から歩行者中心へと街の構造を変える動きが加速している。 ニューヨーク市の今回の計画も、そうした世界的な潮流の一環と言えるだろう。
では、歩行者中心の街づくりは、具体的に街にどのような変化をもたらすのだろうか?
第一に、歩行者にとっての安全性と快適性が向上し、街の回遊性が向上することで、街全体の活性化につながることが期待できる。また、緑豊かな空間は、都市生活で失われがちな癒しを提供し、人々の心身に好影響をもたらすだろう。
さらに、今回の五番街の再開発のように歴史や文化を感じさせる空間と、緑や憩いの空間が調和することで、その街の魅力はさらに高まり、国内外から多くの人々を惹きつける新たなランドマークとなる可能性も秘めている。
「歩ける五番街」は、ニューヨークという街の価値をさらに高め、未来への可能性を広げる、重要な一歩となるに違いない。
👀GenZ's Eye👀
大都市ニューヨークをも凌駕する人口と観光客数を有しているにも関わらず、東京は道の狭さが目立つ。渋谷や表参道の歩道は人でパンパン。ここ数年でかなり都内は人が増えた印象がある。若者も人混みを避けて食事や買い物をする人が増え、いつしかトレンドの中心地が下北沢や中目黒といった、大都市圏の中心駅から少し離れたエリアが注目されるようになったのではないだろうか。
環境への意識から人が中心の街づくり、自然や景観を活かした街づくりがスタンダードとなりつつある。時代に合わせた都市開発を進めることは必須だが、すべての人に受け入れられる街づくりを目指すことこそ、いま世界の大都市に求められることなのだろう。