Amazonが「Kindle Oasis」の生産終了を発表
愛読書のページをめくる、あの瞬間のときめき。電子書籍リーダーの隆盛は、私たちに利便性をもたらすいっぽうで、どこか懐かしさをともなうささやかな幸福を奪いつつあるのかもしれない。
2024年10月、電子書籍リーダーの代表格であるKindleのハイエンドモデル「Kindle Oasis」の販売終了が発表された。「The Verge」によると、Amazonは「今後はタッチ操作に特化したデバイス開発に注力していく」とコメントしており、物理ボタンを搭載した電子書籍リーダーの終焉を告げている。
高級路線を突き進んだ
Kindle Oasisの足跡
Kindle Oasisは2016年に初代モデルが発売。以降、2017年、2019年とモデルチェンジを繰り返し、電子書籍リーダーの高級路線を牽引してきた。
片手持ちを快適にするグリップ、心地よいクリック感を実現したページめくりボタンなど、そのこだわり抜かれた設計は、電子書籍リーダーでありながら「紙の書籍」の体験に限りなく近づけようとする開発陣の強い想いを物語っている。
デジタル化の波
読書体験はどう変化する?
今回のKindle Oasis販売終了は、電子書籍リーダーの進化が新たな局面を迎えたことを象徴している。直感的でシンプルな操作が可能なタッチスクリーンは、確かに多くのユーザーにとって魅力的。しかし、電子書籍の普及にともない、世界中で印刷書籍の売上は減少傾向にある。
統計データプラットフォーム「Statista」の調査によると、2023年の世界の消費者向け電子書籍市場規模は、2016年の約2倍に成長し、180億ドルを超えている。利便性の追求は、読書体験における「リアリティ」の喪失にもつながっているのではないだろうか。
近年注目を集めている「メタバース」や「空間コンピューティング」といった技術は、デジタル空間において、よりリアルな体験を可能にする。たとえば、Appleが発表した空間コンピューティングデバイス「Vision Pro」は、現実空間にデジタルコンテンツを重ねて表示するAR技術を用いることで、これまでにない没入型の体験を提供する。こうした技術革新は、電子書籍の分野においても、新たな読書体験を生み出す可能性を秘めていると言えるだろう。
電子書籍は紙媒体を超えられるか?
電子書籍は、今後紙媒体の書籍を超えられるのだろうか。答えはまだ出ていない。しかし、技術の進化によって読書体験がどのように変化していくのか、今後も目が離せない。デジタルとリアルの境界線が曖昧になっていくなか、私たち自身の読書に対する価値観も問われているのかもしれない。
👀GenZ's Eye👀
「本は紙で読みたい派」の意見としましては、ページをめくる行為こそ没入を促してくれる&読書体験の醍醐味と思っておりまして、それ故に電子書籍には手が出せていなかったのですが……。唯一マニュアル味を残してくれていた「ページめくりボタン」が取っ払われてしまうとは!好みではありますが、今後電子の読書体験において「読了感」とはいかにして得られるのか。ますます疑問に思います。