高級ブランド市場縮小、その裏に中国経済とZ世代の影

ブランドロゴが輝くバッグや時計を身につけ、ステータスを競い合う。そんな時代は、過去のものになりつつあるのかもしれない。世界的な経済不安やインフレの影響を受け、いま高級品市場は岐路に立たされている。

「CNBC」の報道によると、2024年の高級品市場は、2008年の金融危機以来となる縮小が予測されている。これは、新型コロナウイルスによるパンデミックの影響を除けば、実に15年ぶりの出来事だ。

中国経済の減速が影を落とす高級品市場

これまで高級品市場を牽引してきたのは、右肩上がりの成長を続ける中国の存在が大きかった。しかし、その中国経済の減速が、高級品業界に暗い影を落としている。カルティエなどを擁する「リシュモングループ」は、2024年度上半期の売上高が前年同期比1%減少し、その要因として中国市場の低迷を挙げている。

加えて、世界的なインフレも高級品市場の逆風となっているようだ。生活必需品の価格が高騰するなか、消費者は財布の紐を締めざるを得ない。高級品は生活に必須ではないため、購買意欲は必然的に低下してしまうのは致し方なしか。

所有から体験へ
価値観のシフトチェンジ

とくに、従来の価値観にとらわれないZ世代の間では、高級品離れの傾向が顕著に見られる。彼らは、ブランド品を所有することよりも、旅行や自己投資など、思い出や経験、スキルといった「体験」にお金を使うことを好む傾向が。

「5000万人の高級品消費者が、過去2年間で市場から離脱、あるいは離脱を余儀なくされた。これはブランドにとって、価値提案の見直しが必要なサイン」。こう警鐘を鳴らすのは、コンサルティング会社「Bain & Company」のパートナーであるClaudia D’Arpizio氏だ。

新しい価値観と共鳴する
これからのラグジュアリー

では、これからの時代、人々の心を掴む新しいラグジュアリーとは、一体どんな形をしているのだろうか。それは、個々の価値観やライフスタイルを尊重し、心を豊かにする体験や、サステナビリティといった社会的な価値観に合致した商品やサービスかもしれない。

たとえば、環境負荷を最小限に抑えた素材や製法を採用したり、地域社会に貢献する活動に積極的に取り組んだりするなど、エシカルな姿勢を示すブランドが支持を集めている。また、デジタル技術を活用したパーソナライズサービスや、これまでにない顧客体験を提供することで、消費者の心を掴もうとする動きも加速している。

高級品業界は今、大きな転換期を迎えている。従来の価値観にとらわれず、変化を恐れずに新たな価値を創造していくことこそが、これからの時代を生き抜くための鍵となるだろう。

👀 GenZ's Eye 👀

ブランドが提供することのできる「価値」とは一体何なのでしょうか?変化していく時代とともに変わらないモノに魅力を感じる筆者です。変わらないものを届けたくとも、新しい価値の創造が求められているイマは戦略変更をせざるを得ない、そんなジレンマも感じ取ることができます。

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TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。