メディアの偏りを可視化する「バイアスメーター」の可能性
フェイクニュースや情報操作が横行する現代。玉石混交の情報の中から、私たちはどのようにして真実を見極めれば良いのだろうか。
そんな時代の要請に応えるかのように、メディアの「偏り」を可視化する新たなテクノロジー、「バイアスメーター」が登場した。
LAタイムズが導入する
「多角的な情報提示」とは
米エンタメ誌「The Hollywood Reporter」によると、米大手紙「ロサンゼルス・タイムズ」は、2025年にも独自のバイアスメーターを導入する予定だという。これは、記事に複数の視点を提示することで、読者の客観的な判断を支援することを目的としている。
同紙オーナーのPatrick Soon-Shiong氏は、「CNN」の番組内で「読者は、記事がどのようなバイアスを持っているのかを理解する必要がある」と、バイアスメーター導入の背景を語った。
既存メディアも始めている
「偏り」への対策
情報源の偏りを可視化する試みは、「LAタイムズ」に限った話ではない。ブラウザ拡張機能「NewsGuard」は、ウェブサイトの政治的な傾向や信頼性をスコアとして表示するサービスを提供。また、俳優クリス・エヴァンスが立ち上げたWEBサイト「A Starting Point」では、政治的なテーマについて、異なる立場の専門家による解説を比較しながら読むことができる。
「中立」の定義は誰が決める?
アルゴリズムの限界と人間の役割
これらのサービスは画期的だが、同時に根深い問題を提起する。それは「誰が、何をもって“中立”と判断するのか」という問題。「バイアス」の定義は極めて曖昧であり、文化的背景や個人的価値観によって大きく左右される。アルゴリズムや専門家の評価だけで、完璧に中立性を担保することは難しいだろう。
むしろ重要なのは、情報を受け取る側が「どんな情報にも偏りは存在する」という前提に立ち、批判的な思考力を持って情報と向き合う姿勢ではないだろうか。
ソーシャルメディアの普及により、私たちは日々膨大な情報に晒されている。そのなかで、自分の意見や価値観に合致する情報ばかりを選択的に摂取してしまうフィルターバブル現象も指摘されている。バイアスメーターは、このようなフィルターバブルに警鐘を鳴らし、多様な情報に触れるきっかけを与えてくれるかもしれない。
情報リテラシーを高め
主体的であり続けるために
情報過多の時代において、私たちは「情報」とどのように向き合っていくべきなのか。バイアスメーターの登場は、私たちにそんな根本的な問いを投げかけている。
バイアスメーターは、あくまでも情報との向き合い方を指南してくれる「羅針盤」の一つに過ぎない。真に情報リテラシーを高めるためには、日頃から情報源の信頼性を確認したり、異なる意見にも耳を傾けたりするなど、主体的な姿勢を保ち続けることが重要だろう。
もちろん、我々も自戒を込めて。