アメリカで「教科書がNFT化」される可能性

アメリカの教科書の大手出版社「ピアソン」が、教科書をNFTとして販売する計画を立てているらしい。

NFTといえば、アートやチケットといった希少性の高いアイテムの取引が多い市場であり、一方の教科書は誰もが閲覧できるべき真逆の性質のもの。では、なぜピアソンは教科書のNFT化を計画しているのか。

答えは明快で、「二次流通による利益を得るため」であるそう。

というのも、教科書は学生同士による中古品のやり取りが多く、特にアメリカや欧州においては「教科書の転売」はよくあること。

しかし、既存の紙媒体の教科書が転売されると、出版社側に利益が入らないことがお分かりいただけるだろう。

NFTでは個々のアイテムに所有権が付与されるため、二次流通以降の取引でも一定の売上金を得ることができる。これを利用するのは、継続的に収益を生み出せる画期的な手段というわけだ。

また、物理的な材料を使わない上に半永久的に引き継いでいけるという点でサステナブルな方法としても魅力的。

ちなみに、「書籍をNFTで販売する」という取り組み自体は真新しいというわけではない。すでに著者が自主出版する際には広く利用されているほか、ドイツのある出版社がNFTマーケットを開いた事例もある。

ただ、先述の通り教科書とは「誰もが閲覧できるべき」もの。

これだけデジタルが普及している現代において、それほど心配する必要はないかもしれないが、何かの節に(NFTアートのような)法外な値段がつく懸念もある。

そして何より、児童が確実に「紙に触れる」機会である教科書をデジタル化してしまっていいのか? そもそも“書籍の価値”とは出版社の利益なのか?

考えなければならない論点は多い。まだ計画段階であるとのことだが、大国アメリカの大手として、影響力と責任感を自負して事を進めてもらいたいところだ。

Top image: © iStock.com/Evgen_Prozhyrko
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