思考でiPhoneを操作できるように?Appleが脳インプラント企業Synchronと提携し新デバイスを開発
Appleが脳インターフェースのスタートアップ企業のSynchronと提携し、体が不自由な人々が手を使わずにApple製品を操作できる技術を共同開発していることが明らかになった。
脳波を読み取り思考でデバイスを操作
この技術の鍵を握るのが、Synchronが開発した「Stentrode」というステント状のデバイス。これを脳の運動野に埋め込むことで、脳波を読み取り、それをデバイスへの指示へと変換する。
Appleは、このStentrodeと自社のアクセシビリティ機能「スイッチコントロール」を連携させる新しい基準を開発。これにより、利用者はiPhoneやiPadの画面を思考だけで操作し、アイコンを選択することが可能になるという。
この機能は、iPhoneやiPadだけでなく、MacBookやVision ProといったApple製品全般で利用できるらしい。ALS(筋萎縮性側索硬化症)や脊髄損傷などで体を動かすことが困難な人々にとって、これは世界との繋がりを大きく変える可能性を秘める。
脳コンピューターインターフェースへの戦略的布石
Appleにとって、この提携は単なるアクセシビリティ機能の向上にとどまらず、脳コンピューターインターフェース(BCI)という、まさに革命的な技術分野への早期参入を意味するものだ。
これは、Appleが将来のヘルスケアサービスやバイオテック分野で主導権を握ろうとする、極めて戦略的な一手と見て間違いないだろう。同社は今年後半にも、開発者向けのバージョンをリリースする計画だという。
ライバルNeuralinkとの今後の関係
一方で、Synchronの技術はまだ発展途上との見方もある。
Stentrodeの電極は16本と比較的少なく、複雑なキーボード操作やマウスの動きを再現するにはデータ量が不十分だという。比較対象として挙げられるのが、イーロン・マスク氏が率いるNeuralinkだ。同社のデバイスは1,000本以上の電極を持ち、より精密な操作の実現を目指している。
今回の提携は、AppleにとってBCI分野への第一歩。
今後、さらに高性能な技術を持つNeuralinkのような企業とどのような関係を築いていくのか。そして、ライバルであるGoogleのAndroid陣営がどう動くのか。テクノロジー業界の次なる主戦場は、私たちの脳の中なのかもしれない。