プロテインバーの隣に生魚?Davidの奇策が示すものとは……
フィットネスや健康志向の高まりとともに、機能性食品市場が拡大の一途をたどる米国。その中でも特に競争の激しいプロテインバー業界で、常識を揺るがすような一手に関心が集まっている。
驚異的な栄養バランスを誇る『David Protein Bar』のメーカーとして知られるDavidが、全く新しい商品をリリースしたのだ。
それは、なんと「生のタラの切り身」であった。
沈黙を破って現れた、前代未聞の新商品
Davidは数週間にわたり、SNSの投稿を全て削除してまで新商品の登場を予告し、ユーザーの期待感を高めていた。ブランドのリニューアルか、待望の新フレーバーか。
憶測が飛び交う中、ついに公式サイトに姿を現したのは『Wild Caught
Pacific Cod』、4枚入りの天然太平洋産タラの切り身だった。
これはジョークではなく、カスタムパッケージに収められたこの商品は、実際にオンラインストアで購入可能な製品だという。
高タンパク・低脂質の代表格であるタラは、1食分(6oz)あたりタンパク質23g、脂質1g、そして炭水化物と糖質はゼロで100kcalという優れた栄養価を誇る。
この数値は、天然の食品がいかに優れたタンパク源であるかを物語るものだ。しかし、すぐに食べられるプロテインバーを主力とするブランドが、なぜ調理を必要とする生の魚を発売したのか。この不可解な動きは、多くの消費者を困惑させている。
奇策の裏に透ける絶対的な自信
メディアや消費者の間では、これはDavidの巧みなマーケティング戦略であり、自社製品の圧倒的な品質を証明するためのデモンストレーションではないかとの見方が広がっている。
Davidのプロテインバーは、天然の高品質なタンパク源であるタラの栄養バランスに極めて近い、あるいはそれを凌駕するほどの栄養価を実現している。
つまり、「これほど優れた天然食材に匹敵するレベルの製品を、我々は手軽なバーという形で提供している」というブランドの揺るぎない自信とメッセージを、この“ありえない”新商品を通じて伝えようとしているのかもしれない。
実際にDavidは、他の魚種ではなくタラを選んだ理由について「カロリーの92%がタンパク質由来だから」と説明しているという。
この狙いは、単なる話題作りにとどまらない、製品の価値を消費者に深く理解させるための高度な計算に基づいた一手と位置づけられる。
激化する市場で存在感を示す一手?
米国のプロテインバー市場は、大手から新興ブランドまでがひしめき合い、熾烈な競争が繰り広げられている。
健康志向の高まりを受け、消費者は単にタンパク質が多いだけでなく、より自然でクリーンな成分や付加価値を求めるようになった。
このような環境下で他社との差別化を図り、消費者の記憶にブランドを刻み込むためには、型にはまらないアプローチが不可欠だ。
今回のDavidの試みは、機能性食品市場における奇抜なブランディング戦略の一例といえるだろう。製品の性能を直接的に訴求するのではなく、消費者に「なぜ?」という問いを投げかけ、自らその答えにたどり着かせる。このプロセスを通じて、ブランドへの関与と製品への信頼を深めるという狙いがうかがえる。
今後、Davidが鶏胸肉や他の精肉製品をラインナップに加えるのかという問いに対し、同社は「我々は肉を追いかけない。スタンダードを築き上げるのだ」と、謎めいたコメントを残しているらしい。






