AI美容アプリ「Refresh」が変える、“なりたい自分”の試し方

デジタルプロダクト企業Eightpointが、AI搭載の美容アプリ「Refresh」のiOS版ローンチを発表しました。ヘアスタイルからメイク、カラーまでをひとつのアプリで自然に試せるという同アプリ。「盛る」ことと「自分らしさ」の間で揺れる私たちに、新しい選択肢を提示してくれそうです。

"オールインワン"の意味

ここ数年、AIを活用した美容系アプリは数多く登場してきました。ヘアカラーを変えるもの、メイクをシミュレーションするもの、顔のパーツを微調整するもの──それぞれが単機能で優れていても、「トータルで自分がどう見えるか」を確認するには、複数のアプリを行き来する必要がありました。

Refreshが掲げるコンセプトは「ひとつのアプリで完全な変身(one app, complete transformation)」。40種類以上のヘアスタイルエンジン、ナチュラルからボールドまで対応するヘアカラー変換、日常使いからフルグラムまでカバーするメイクシミュレーター、さらにはフェイシャルヘア(ひげ)のスタジオまで搭載しているとのことです。注目すべきは「マルチエディットスタジオ」と呼ばれる機能で、これらの変更を個別にではなく、ひとつの仕上がりとして統合できる点でしょう。

EightpointのCEO、Deniz Gezgin氏は「オールインワンが重要なのは、美容の意思決定がひとつの要素だけで完結することはほとんどないからだ」と語っています。たしかに、髪色を変えたらメイクのトーンも変わるし、眉の形ひとつで印象は大きく左右されます。パーツ単位ではなく「全体像」として自分を見られることは、想像以上に実用的な価値があるのかもしれません。

「自然さ」への回帰

近年、SNSを中心に興味深い潮流が生まれています。かつては「いかに盛るか」が美容加工の主流でしたが、最近では「加工していないように見える加工」や「自分の素の魅力を引き出す方向性」を好む層が確実に増えてきました。いわば、"盛り"の定義そのものが変わりつつあるのです。

Refreshの技術基盤には高度な機械学習が用いられており、幅広い肌色や顔の特徴に対応しながら「自然な仕上がり」を実現するよう設計されているとのこと。Gezgin氏も「人々は摩擦なく新しいルックやトレンドを探索したいが、同時に自然で信じられる結果を求めている」と述べています。

この「信じられる(believable)」という言葉選びは示唆的です。完璧すぎる加工はもはや求められていない。むしろ、「実際にサロンに行ったらこうなるかも」「明日からこのメイクを試してみよう」と思える現実的なシミュレーションこそが、ユーザーにとっての本当の価値になりつつあるのではないでしょうか。

試す前に「見える」体験

Refreshの想定ユーザーは幅広く設定されています。新しいヘアスタイルやカラーを検討している人はもちろん、変身コンテンツを制作するクリエイター、あるいは「ちょっとした変化で気分を変えたい」という人まで。目や唇、表情の微細な補正機能や、背景・ライティングの調整機能も備えており、SNSへの共有もスムーズに行えるソーシャルエクスポート機能が搭載されているそうです。

美容における「失敗のコスト」は、金銭面だけでなく心理面でも大きいものです。思い切って髪を切ったら似合わなかった、流行のメイクを試したら自分の顔立ちには合わなかった──そんな経験は誰にでもあるでしょう。事前に「自分の顔で」リアルにシミュレーションできるツールは、単なる遊びを超えて、美容の意思決定を支えるインフラになり得る可能性を秘めています。

「なりたい自分」の解像度

開発元のEightpointは、NOAA(アメリカ海洋大気庁)の公式データを活用した気象アプリやプライバシー重視の家族向け位置共有アプリなど、ジャンルの異なる複数のプロダクトを展開している企業です。美容専業ではないからこそ、テクノロジーファーストの視点で「ユーザーが本当に必要としている体験とは何か」を問い直せたのかもしれません。

AI美容ツールの進化は、私たちに「なりたい自分」の解像度を上げる機会を与えてくれます。ただし、それは「別人になる」ことではなく、「自分の可能性を知る」ことに近いはず。Refreshというアプリ名が示すように、求められているのは“誰かになる”ための劇的な変身ではなく、いまの自分を少し更新してみる感覚なのかもしれません。

Top image: © Eightpoint
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。