夜更かしより、夕方に一杯。世界で広がる「デイキャップ」という新習慣

米メディア「Food & Wine」が報じた、ちょっと気になる飲酒トレンドがあります。バカルディの2026年カクテルトレンドレポートが名付けた新しい習慣——「デイキャップ(daycap)」。寝る前の一杯=ナイトキャップの対語として生まれたこの言葉が、いま世界中で静かに広がっているようです。

34%が「早い時間」へ

デイキャップとは、午後から夕方の早い時間帯にカクテルを一杯だけ楽しみ、それを一日の区切りにする習慣のこと。夜遅くまでバーをはしごするのではなく、明るいうちにテラス席で軽いスプリッツを傾けて、さっと帰る。そんなイメージです。

バカルディのレポートによれば、米国では法定飲酒年齢以上の約34%が「以前より早い時間帯に飲食や社交を始めるようになった」と回答しています。スペインとインドでは40%、フランスに至っては51%。特定の世代や地域に限った話ではなく、かなり広範な現象であることがうかがえます。

同社はこの動きを「アフタヌーン・ソサエティ(午後の社交)」というマクロトレンドの一部と位置づけていて、低アルコール度数のカクテル、18時頃のディナー予約、屋外での飲酒、早めの帰宅——といった意図的な行動変容がセットで起きているとのこと。

50%が圧力、60%が文化

このトレンドの牽引役とされるZ世代は、実はかなり複雑な板挟みの中にいます。国際責任飲酒アライアンス(IARD)のデータによると、Z世代の50%が健康メッセージから飲酒を控えるよう圧力を感じている一方で、60%はアルコールを自分たちの文化の一部と見なし、社交を豊かにするものだと考えている。「飲みたい、でも飲みすぎたくない」——この矛盾を解消する折衷案として、デイキャップが機能しているわけです。

IARDの広報担当者は「節度ある飲酒が主流になった。社交的飲酒の減少ではなく、より意図的でバランスの取れた消費へのシフトだ」とコメントしています。

経済的な事情も見逃せません。国際ワイン・スピリッツ記録(IWSR)の報告では、2025年を通じて高所得層を含む全所得層でアルコール予算が減少したとされています。夜通し飲むより、午後遅くの一杯に絞るほうが財布にも体にもやさしい。合理的といえば、これ以上なく合理的な選択です。

始まりではなく切り上げの儀式

バカルディのグローバル・オントレード担当副社長ショーン・ケリー氏は「Z世代は飲酒量を減らしているのではなく、より早く、より軽く、より意図的に飲んでいる」と「Food & Wine」の取材で述べています。ここが面白いところで、デイキャップは禁酒運動でも健康キャンペーンでもなく、「一杯だけを特別なものとして選ぶ」という快楽の引き算なんですよね。

イタリアのアペリティーボやアメリカのハッピーアワーとも似て非なるもの。ハッピーアワーが「夜の始まり」を告げるのに対して、デイキャップは「一日の終わり」を告げる。飲み始めの合図ではなく、切り上げの儀式

日本に目を向ければ、角打ちや昼飲みの再評価、低アルコール飲料の台頭、そして「飲み会=長時間拘束」への静かな疲弊感——デイキャップ的な感覚の芽は、すでにあちこちに顔を出している気がしてなりません。

夜を長く過ごすことが社交の充実だった時代から、午後の一杯で満ち足りて帰る時代へ。これは飲酒の話に見えて、実は「自分の時間をどう閉じるか」という、もっと大きな問いかけなのかもしれません。

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