子どもの「野菜嫌い」はお腹の中で変えられる?胎児期の味覚記憶に注目

子育て中の親にとって、子どもの偏食や野菜嫌いは避けて通れない悩みのひとつ。

でも最新の研究によって、子どもの食の好みは、離乳食が始まるずっと前——母親のお腹の中にいる段階から形成され始めている可能性が浮かび上がってきました。

妊娠中の食生活と、将来の味覚。その関係は、私たちが思っている以上に深いのかもしれません。

胎内での経験が、味覚のベースになる

妊娠後期に始まる「味覚の記憶」

研究グループが注目したのは、胎児の感覚発達。妊娠28週頃になると、胎児は母親が摂取した食品の風味や匂いを、羊水を通じて感じ取れるほど発達しているのだとか。

母親が食べたものの成分は胎盤を通じて羊水へ移行し、胎児はその味や匂いを“経験”している。その積み重ねが、脳に長期的な記憶として残っている可能性もあるそうです。

つまり、食の好みは生まれてから始まるものではなく、生まれる前から少しずつ形づくられているのかもしれません。

3歳になっても残っていた、胎内の記憶

ダラム大学とアストン大学の研究チームは、妊娠中にニンジンやケールの粉末を摂取した母親から生まれた子どもたちを対象に、3歳時点での追跡調査を行いました。

実験で使われたのは、「味」ではなく「匂い」。子どもたちにニンジンとケールの匂いを嗅がせ、そのときの表情や反応を観察したところ、胎内で接触経験のあった野菜に対しては、否定的な反応が少なくなる傾向が確認されたといいます。

まだ言葉も理解していない時期の経験が、数年後の感覚にまで影響している。これ、ちょっと驚きです。

苦味への拒絶反応もやわらぐ?

特に注目されたのが、苦味の強いケールへの反応。一般的に、子どもは苦味を嫌いやすい傾向があります。でも胎内でケールの風味に触れていた子どもたちは、成長後の拒絶反応が比較的弱かったそうです。「苦いから嫌い」は、生まれつき決まっているわけではないのかもしれません。

味覚の好みは、後天的な学習だけでなく、胎内環境という極めて初期の段階から影響を受けている可能性も。そう考えると、妊娠中の食生活の見え方も少し変わってきます。

「胎内からの食育」という新しい視点

食育のスタートは、離乳食より前?

今回の研究が示唆しているのは、「妊娠期からの早期介入」という考え方。これまで食育といえば、離乳食や幼児食の段階から始めるもの、というイメージが一般的でした。でも今回の知見は、そのもっと前——胎内環境から食習慣の土台づくりが始められる可能性を示しています。

もしこのアプローチが今後さらに研究され、公衆衛生の領域に応用されていけばどうでしょう。将来的な肥満や生活習慣病の予防につながる、新しい健康戦略になっていくのかもしれません。

食育のスタート地点、そのものが変わるのかもしれない。そんな研究です。

味覚は、そんなに単純じゃない

もちろん、今回の研究だけですべてが説明できるわけではありません。実験で測定されたのは、あくまで「匂いに対する反応」。子どもたちが実際に野菜を食べたり、自ら選んだりしたわけではありません。

さらに、味覚や食の好みは、遺伝、家庭環境、文化的背景など、さまざまな要素が複雑に絡み合って形成されるもの。研究者たちも、その点については慎重な姿勢を見せています。だからこそ今後は、より大規模な研究や長期的な追跡調査が重要になってくるはずです。

個人ごとの感受性や環境差まで踏まえた、“よりパーソナルな食育”へ。そんな未来も、少しずつ現実になっていくのかもしれません。

「野菜嫌い」は、もしかしたらずっと前から始まっていたのかも!?

画像: AIによる生成
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。