農業体験で終わらない。親子で考える“暮らしをつくる力”

やる気スイッチグループの発表によると、同グループは三重県多気町の商業施設「VISON」にて、「自給自足カレッジ」との共創による親子向けスタディツアーを2026年3月に開催しました。注目すべきは、農業を「する・しない」の二択ではなく、暮らしの1/4だけ土に触れる「クォーターファーマー」という生き方を、親子で体験するプログラムだという点です。

「クォーターファーマー」とは

「半農半X」という言葉を耳にしたことがある方は多いかもしれません。農業と別の仕事を半々で営むライフスタイルとして、ここ十数年で広く知られるようになりました。しかし、実際に「半分」を農業に充てるとなると、移住や大幅なキャリアチェンジが前提になりがちで、都市生活者にとってはハードルが高いのも事実です。

そこで自給自足カレッジが提唱しているのが「クォーターファーマー」という考え方。週1〜2日、つまり労働時間のおよそ1/4を土に触れる時間に充てるというものです。完全な自給自足を目指すわけではなく、暮らしの一部を自分の手でつくることに価値を見出す。この「1/4」という具体的な数字が、農業との距離感をぐっと身近にしてくれるのではないでしょうか。

近年、家庭菜園やベランダ農園の人気が高まっていることからもわかるように、「食べるものを自分でつくりたい」という欲求は確実に広がっています。ただ、それが趣味の域を出ないまま終わってしまうケースも少なくありません。クォーターファーマーという概念は、趣味と専業のあいだに「生き方の選択肢」としての中間地点を設けている点で、一歩踏み込んだ提案だと感じます。

体験を「学び」に変える仕掛け

今回のスタディツアーは2日間にわたって行われ、プログラムは大きく3つの柱で構成されていたとのこと。

まず、オーガニック農園での収穫や動物との触れ合いを通じた「食」と「農」の体験。次に、江戸時代の1790年から三重県紀北町で林業を営み、2000年に日本初のFSC認証(森林管理協議会による、適切な森林管理が行われていることを証明する国際認証)を取得した「速水林業」の森での散策とスワッグ作り。食卓に並ぶ野菜の背景には、それを育む土があり、土を守る森がある——「食」「農」「森」の循環を身体で感じる構成になっています。

しかし、このツアーが単なる農業体験と一線を画しているのは、やる気スイッチグループならではの教育設計が組み込まれている点でしょう。同グループが独自に開発したワークブックを使い、「考える・言葉にする・振り返る」というプロセスを体験の合間に挟んでいくのです。

子ども向けの自然体験プログラムは全国各地で開催されていますが、「楽しかった!」という感想で完結してしまうことも珍しくありません。体験そのものに価値があるのはもちろんですが、そこで感じたことを自分の言葉にし、振り返る時間があることで、記憶は「思い出」から「学び」へと変わっていく。教育事業を長年手がけてきた同グループだからこそ設計できた仕組みだといえます。

さらに、イングリッシュティーチャー2名が同行し、目にするものを英語で表現する「生きた英語体験」も提供されたそうです。教室で学ぶ英語とは異なり、土や草や動物を前にして出てくる言葉には、実感がこもります。

親も「学びの当事者」になる

今回のツアーで特に興味深いのは、保護者も「学びの当事者」として参加する共創型の設計になっている点です。

参加した保護者からは「農作業や森探索など、たくさん自然に触れることができて大変満足」「普段は友人と過ごす機会が少ない息子が他のお子さまやスタッフと打ち解け、積極的に参加する姿を見ることができた」といった声が寄せられたとのこと。子どもの変化を目の当たりにすることで、保護者自身の価値観にも揺さぶりがかかる。それこそが「共創型」の真価なのかもしれません。

共創パートナーである自給自足カレッジの代表・小柴正浩氏も、やる気スイッチグループの問いかけや振り返りの教育設計が加わることで、自然体験がその場限りで終わらず、親子それぞれの学びとして深まる手応えを感じたと語っています。

「体験の消費」から一歩先へ

やる気スイッチグループは2026年度に年間30本のスタディツアーを予定しているとのこと。8つのスクールブランドを展開し、国内外で約2,400以上の教室を運営する同グループが、教室の外にまで学びのフィールドを広げようとしている動きは注目に値します。

私たちの暮らしは、食べ物がどこから来るのか、森がどんな役割を果たしているのか、見えにくい時代になりました。だからこそ、「週の1/4だけでも土に触れてみる」という提案は、子どもだけでなく大人にとっても、暮らしを見つめ直すきっかけになり得るのではないでしょうか。農業体験を「消費する非日常」ではなく、「日常に持ち帰れる生き方のヒント」として捉え直す——そんな視点の転換が、このスタディツアーには詰まっているように思えます。

やる気スイッチグループ

【公式サイト】https://www.yarukiswitch.jp/

Top image: © 株式会社やる気スイッチグループ
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