プロテインだけでは足りない。GLP-1時代の新しい栄養設計
テキサス州オースティン発のブランド「Mía(ミア)」が、食物繊維を最優先に設計したプロテインシェイク「Fiber-First Shake」を発売しました。GLP-1薬の普及で「食べる量が減る時代」に突入したアメリカで、いま栄養の優先順位そのものが問い直されています。
「食物繊維ギャップ」とは何か
アメリカ人の95%が、1日に必要な食物繊維を摂れていない──。これは同社のプレスリリースが引用する学術データに基づく数字です。American Journal of Lifestyle Medicine(2017年)やCDCの全米栄養調査(NHANES 2013–2018)によれば、1日の平均摂取量はわずか14〜16g。推奨量は女性で25〜30g、男性で38gとされていますから、その差は歴然でしょう。
そこにGLP-1受容体作動薬──肥満や糖尿病の治療に用いられる注射薬──の急速な普及が重なりました。この薬は食欲を抑制し、食事量全体を減少させます。体重管理には効果的ですが、食べる量が減れば、当然ながら食物繊維の摂取機会も削られてしまう。Míaはこの構造的な栄養不足を「ファイバーギャップ(食物繊維の溝)」と呼び、製品開発の出発点に据えています。
日本でもGLP-1薬への関心は高まりつつありますが、「食べる量を減らすこと」と「必要な栄養を確保すること」が同時に求められるというパラドックスは、今後多くの人にとって他人事ではなくなるかもしれません。
タンパク質の「効き方」を変える設計
興味深いのは、Míaが単に「食物繊維もたくさん入れました」という足し算の発想ではない点です。
同社の発表によれば、食物繊維が不足した状態で高タンパク質食を続けると、腸内細菌叢がタンパク質発酵に偏り、有害な副産物を生成するリスクがあるとのこと。この知見はMolecular Nutrition & Food Research誌(2024年)に掲載された研究に基づいています。
つまり、プロテインをいくら摂っても、食物繊維という「土台」がなければ腸内で正しく機能しない可能性がある。Míaの製品設計は、この科学的根拠をそのまま形にしたものといえます。
実際、Fiber-First Shakeは1食あたり食物繊維22g、植物性タンパク質27g、200kcalという構成。食物繊維源にはプレバイオティクスとして知られるアカシアガムとFOS(フラクトオリゴ糖)を採用し、タンパク質には有機エンドウ豆と米を使用しています。さらに17種の消化酵素、ライオンズメインやチャガなどの機能性キノコ、スピルリナやクロレラといったスーパーグリーン、15種以上のビタミン・ミネラルまで配合。砂糖・乳製品不使用で、甘味にはモンクフルーツ(羅漢果)を使っています。
同社によれば、「高食物繊維」を謳う既存のプロテインシェイクでも、実際の含有量は1食あたり3〜10g程度にとどまるケースが多いとのこと。22gという数字は、既存市場の常識を大きく超えるものです。
「引き算の時代」の栄養哲学
創業者のジェニファー・ホルト氏は、「食物繊維を優先しつつタンパク質も妥協しないシェイクが見つからなかったので、自分で作った」とコメントしています。忙しい毎日の中で20種類ものサプリメントを管理するのではなく、一杯で一貫した結果を得られるように──。その思いが製品に凝縮されているようです。
ブランド名の「Mía」はスペイン語で「私のもの」を意味します。GLP-1薬という外部からの介入で食生活が変わっていく時代に、「自分自身の身体を取り戻す」という宣言のようにも聞こえます。
SNSでは「#fibermaxxing」というハッシュタグがトレンド化しているといいます。かつてタンパク質の量を競い合っていたウェルネス市場が、いま「何を最初に摂るべきか」という優先順位の議論へとシフトしつつあるのかもしれません。
食べる量が減る時代に、限られた一口の価値をどう最大化するか。Míaの提案は、その問いに対するひとつの明快な答えに見えます。






