日本百名山の登山者が2年で18%減。熊の出没が集中する東北では34%減
人流ビッグデータを手がける株式会社unerryが、スマートフォンの位置情報約2.4億ID分を使い、2024〜2026年の春(4〜6月)に日本百名山を訪れた登山者の動向を分析しました。
浮かび上がったのは、「登山ブーム」と言われる時代にあっても、熊の出没リスクひとつで人の足がエリアごとに大きく変わるという現実です。
来訪者が減った東北の山と
重なる「熊の出没7割集中」

百名山全体の来訪者数は、2024年から2026年の2年間で18%減少しました。
エリア別に見ると、落ち込みが最も激しいのは東北の−34%。次いで北海道が−32%と続きます。
一方、近畿は−3%、中国四国は−6%とほぼ横ばい。同じ「百名山」でも、地域によってまるで別の景色が広がっています。
この差と重なるのが、熊の出没件数です。環境省の速報値によれば、2025年度の出没件数は全国で50,801件。前年度の20,513件から1年で2倍以上に跳ね上がりました。
しかも、その約7割が東北6県に集中していたのです。背景には、ドングリなど木の実の凶作があったとされています。
2026年度に入っても6月の出没は6,260件と、過去5年の同月で最多水準。高止まりの状況が続いています。
八幡平は半減、磐梯山は回復。
登山者は山ごとにリスクを見ている

興味深いのは、「東北だから一律に敬遠されている」わけではない点です。
岩手県の八幡平は2年前比で−46%と、分析対象23山のなかで最大の落ち込みを記録しました。
ところが福島県の磐梯山は、直近1年で前年比+36%の回復を見せています。安達太良山も同+12%。
つまり登山者は「東北=危険」と十把一絡げに避けているのではなく、山ごとのリスク情報を見ながら行き先を選び直している可能性があるのです。
景色やコースだけでなく
「その山域で何が起きているか」を見る時代
かつて登山先を決める基準といえば、景観の美しさ、コースの難易度、アクセスの良さあたりが定番でした。
しかし今回の調査が示唆するのは、「野生動物リスクの低さ」が、それらと並ぶ──あるいは上回る──選択基準になりつつあるということです。
unerryは人流データを「単なる数字の集合ではなく『人の営み』」と表現しています。
春の山を目指す高揚感と、熊への警戒心。その両方を抱えながら、登山者は自分なりの答えを出している。データはその葛藤の軌跡を、静かに映し出しているのかもしれません。
2年前比でプラスを記録したのは、23山中わずか2山。九州の開聞岳(+18%)と滋賀の伊吹山(+2%)だけでした。
この夏、山の計画を立てている方は少なくないはずです。「どこに登るか」を考えるとき、景色やコースタイムだけでなく、その山域で何が起きているかにも目を向けてみる。それが、山を長く楽しむための新しいリテラシーになりつつあるのだと思います。






