1杯1,700円。それでもロンドンの金融エリートがスムージーを選ぶ理由
スムージーといえば、フルーツをミキサーにかけた素朴な朝の一杯。ところがいま、ロンドンの金融街では筋肉増強成分やストレス軽減ハーブを追加注文するビジネスパーソンが増えているそうです。
燃え尽きた27歳が見つけた、
「食べる時間がない」の解決策
きっかけは、ごく個人的な体験でした。
ロンドンの金融業界で週100時間働いていたJulia Baldetさんは、2025年、27歳のときに体を壊しかけたといいます。きちんと食事をとる時間がない。かといってスーパーの既製品では物足りない。
その経験から生まれたのが、栄養強化スムージーブランド「Elevate」です。ロンドン・シティの歴史ある建物Royal Exchangeにカフェを構え、高級コスメショップに並んでいても違和感のないパッケージで提供しています。
ベストセラーの「The Glow」は、ベリーとヨーグルトに肌のコンディションを整えるコラーゲンを配合したもので、1杯8.90ポンド、日本円にしておよそ1,700円。
さらに1.30ポンドの追加料金で、即効性のエネルギー源とされるMCTオイルや、集中力をサポートするとされるライオンズメインというキノコ由来の成分などを加えることもできます。「Financial Times」が報じたこの光景は、食事の意味そのものが変わりつつあることを映し出しています。
食事が「競争優位」になる時代、
日本の食卓はどう変わるか
この動きは一店舗の話にとどまりません。
銀行業界で15年働いた後にオンザゴー栄養ブランド「Exalt」を共同創業したDan Wilson-Vaughanさんは、同紙の取材にこう語っています。「アスリートがリカバリーとパフォーマンスを求めるように、企業人もいまは両方を求めている」。
シリコンバレーのスムージーバー「Earthbar」でも、約50種類のアドオンから自分だけの一杯をカスタマイズできるメニューが14.95ドルで人気を集めています。
一方で、冷静な声もあります。アスリートやFortune 500企業のCEOに栄養指導を行うJames Collinsさんは、同紙の取材で「マーケティングは、サプリメントが健康の特効薬になると人々に信じさせてしまう」と警鐘を鳴らしています。
日本でも完全栄養食やプロテインバーが当たり前になりつつあります。忙しい日の食事を効率化すること自体は、悪いことではないでしょう。
でも、元記事の最後にあった一文が気になります。「時にはラップトップを閉じて、友人と夕食に出かけるだけでいいのかもしれない」。
1杯1,700円のスムージーが教えてくれるのは、最適化の先にある問いなのかもしれません。食事を仕事道具にしたとき、私たちは何を手放しているのだろう、と。






