「全部、四角い」への反抗。2000年代の遊び心を取り戻すDIYガジェット
スマートフォンを開けば、世界中の情報へ瞬時にアクセスできる時代です。しかし、手元にある板状の画面にどこか味気なさを感じたことはないでしょうか。
そんな現代のデジタル機器に対し、あえて特定の飲食店だけを指し示すコンパスという、強烈な偏愛を注ぎ込んだ自作ガジェットが海外で注目を集めています。
無機質な四角形への違和感から
米メディアのGizmodoによる特集で紹介されたのは、ニューヨークを拠点に活動するハードウェアクリエイターのトゥル・ナーラ氏です。
大手テック企業でソフトウェアエンジニアとして働いていた彼女は、2023年に独立しました。現在はMewTruという名義で、独自の自作デバイスをSNS上で発信しています。
彼女が作るのは、大好きなファストフードチェーンの方向しか指さないデジタルコンパスです。北を指す本来の機能を捨て、最寄りのタコベルがある方角だけを針が示し続けます。
実用性だけを求めれば、スマートフォンの地図アプリで事足ります。しかし彼女は、あえて目的をひとつに絞り込み、持つ人の愛着を形にしました。
ナーラ氏が目指すのは、2000年代半ばの空気感です。当時の携帯電話や小型ゲーム機が持っていた、カラフルで丸みを帯びたポップなデザインを大切にしています。
同氏によると、現代の電子機器は落ち着いた色合いの四角形ばかりで、どれも無菌室のように整いすぎています。だからこそ、かつてのように虹色の遊び心にあふれた道具を、自らの手で取り戻そうとしているのです。
AI時代だからこそ手仕事の現場へ
ナーラ氏の創作は、画面の中だけで完結しません。任天堂のゲームに登場するキャラクターを着想源にした歩数計の制作を進めるなど、手にとって触れられる道具を次々に生み出しています。
彼女がソフトウェアの開発から離れ、電子工作や3Dプリントといったものづくりに足を踏み入れた背景には、近年のAIの進化がありました。
画面上のプログラムコードが自動で生み出されるようになった今、ツールに指示を出すだけでは味わえない創作を求めたと同氏は語ります。自分の手でハンダごてを握り、試行錯誤を重ねる身体性こそが、かけがえのない価値を持ち始めているのかもしれません。
あらゆる機能が薄い画面に集約される今だからこそ、無駄で愛おしい手作りの道具が、私たちの暮らしに新鮮な手触りを思い出させてくれます。






